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アンクレンチング・フィストのstanleyk2001のレビュー・感想・評価

3.2
『アンクレンチング・フィスト』2021ロシア
Разжимая кулаки
Unclenching The Fists
(両の拳を握り締めて)

第74回カンヌ映画祭「ある視点」グランプリ受賞作品。ロシア連邦北オセチアが舞台。

オセチアは黒海とカスピ海の中間にある。2008年グルジア軍が侵攻してロシア軍とオセチア軍が戦った南オセチア紛争(5日間戦争)があった。

この戦争を子供の視点からファンタジーを交えて描いた『オーガスト・ウォーズ』という映画がありましたな。

主人公アダは父親と次男ダッコと暮らしている。長男アキムは家を出て街で自活している。母は数年前に病死している。

アダを口説こうとするしつこい男タミクに付き纏われている。

仕事から終わって帰宅すると父親から香水をつけるなとか干渉される。父親はアダのパスポートを取り上げてどこにも行けない様に束縛している。

男たちの距離の取り方が近い。タミクはアダのバッグを取り上げて手が届かない様にして自分の車に乗ったら返してやるという。小学生か!弟もアダにタックルしたり暑苦しい。

父や弟からの束縛を逃れようとアダは家にうんざりして家を出ている兄アキムを呼ぶが父親はアダを手元から離さないと頑張る。

父の誕生日に集まる父の友人たちも「長男だからいつかは家に帰るべきだ。地元が一番だ」と言うがアキムは「絶対に戻ってこない!」と反発する。

これは日本の地方でもよく聞く話だなと思った。

地方の閉塞感。男女差別、家父長主義。世界のどこでも田舎はこうなんだなとうんざりする。だから若者は田舎を離れて都会に出る。

特にこの映画で描かれている鉱山町は温泉プール以外娯楽がない。こんなところで生きていたら息が詰まってうんざりするのも無理はない。

あまり解放感がなくコーカサス地方の貧困や閉塞感ばかりでつらかった。

エンドクレジットに、「ロマン・アブラモヴィッチに感謝する」とあった。チェルシーFCのオーナーだったこともあるロシアのオリガルヒ(新興財閥)だ。製作費を応援してもらったのかな。

蛇足
この映画は配信サービスJAIHOでのみ提供されている。映画祭などで上映された作品を配信してくれるならと加入したがTV用のアプリが一時停止出来ない仕様なのに驚いた。いったん途中で再生終了すると冒頭から見るハメになった。改善を希望します。
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