しゅんすけ

オッペンハイマーのしゅんすけのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.8
「オッペンハイマー」

クリストファー・ノーラン監督の最新作。
「原爆の父」と呼ばれたオッペンハイマー博士の生涯を時間軸をミックスさせながら描く。

 いやー、3時間と長尺で、化学が苦手な自分は途中置いてけぼりになりそうでしたけど、後半の展開に特に引き込まれました。

 中身としては、
1.終戦に向けて原爆の開発を目指す「マンハッタン計画」(カラー)
2.事実上公職追放処分となった「オッペンハイマー事件」(カラー)
3.重職に就くにあたり開かれた「ストローズの公聴会」(モノクロ)

の3つを行ったり来たりしながら進む感じです。

 1.については、原爆完成→「トリニティ実験」という中盤の派手な見せ場はあるんですが、やはり日本人としては心苦しかったです。特に原爆をどこに落とすか、何発落とすかの議論のところは「やめてくれよ・・・」という気分にさせられました。

 そのあとの2.と3.の行ったり来たりの場面がいわゆる水爆反対派、核軍拡反対派のオッペンハイマー側と、水爆推進派のストローズ側での対立構造で実際の出来事の時期はずれているのですが、同じ法廷に2人とも立たされているような構図になっていて、ここが無類に(映画として)面白かったです。

 いくつかのレビューで普通に時系列を描いたほうがよかったのでは?という意見があったのですが、自分はそれには反対で、時系列のミックスの効果は大いにあったと思います。
 時系列どおりに描けば、オッペンハイマーは原爆開発で栄光を受けたけど、戦後は苦しい状況に立たされたというだけで終わるのですが、今回の時系列のミックスで、オッペンハイマーの人物造形に深みが出てるし、愛人関係など人として問題のあるところ、科学者やリーダーとして優れているところなどいろんな面を観ることができたと思います。

 R15+指定なのですが、序盤に性描写があるため該当したのだと思われます。結構生々しかったのでびっくりしました。オッペンハイマーが公聴会で幻想で全裸になり、愛人に抱かれている描写は、オッペンハイマーの隠してたことがさらけ出されていることを端的に表して、ノーラン映画でこういうハードな描写はあまり観ないのでちょっとギョッとしました。

 YouTubeでノーランのインタビューを観ていたのですが、ノーランってこんなに核の脅威に興味・関心・危機感がある人なんだと改めて知りました。確かに「ダークナイト」3部作はいずれも爆弾の脅威にゴッサムシティは晒されるし(「~ライジング」はもろに核爆弾が脅威として出てくる)、「TENET テネット」は世界を破滅する兵器が使われる前に戻れたとしたらというところにチャレンジしていたよな~と改めて感じました。

 いやー、観てよかったと思います。体調を整えてもう1回チャレンジしようかな。さすがにこれは傑作です。