映画ネズミ

鬼が笑うの映画ネズミのレビュー・感想・評価

鬼が笑う(2021年製作の映画)
3.8
向いている人:
①社会派映画が好きな人
②日本の社会問題に興味がある人

 チネマットオンライン試写会で鑑賞しました。

 本当に重い……この国が抱える病理を容赦なく叩きつけられる作品でした。

 母と妹を守るため、暴力を振るう父を殺害した主人公・一馬。殺人の罪で服役して出所後、社会復帰を目指して更生保護施設で生活し、スクラップ工場でわずかな給料で働く毎日。ある日、外国人実習生が入ってきて、一馬は彼らと職場での日々を共にするようになるが…という物語。

 タイトルの出方がとてもカッコいいです。

 服役を終えて出所した人の社会復帰や、外国人労働者問題は、何十年にもわたってこの国が抱えてきた問題です。こうした人々が社会から「見えない物」のように扱われた結果、様々な問題が派生していく。同じ国に住んでいるのに、なぜ人をモノのように扱えるのでしょうか?

 岡田義徳演じる社長の、体裁ばかり気にして目下の人間をモノ扱いする偽善者的な感じ、被害者面する感じを含め、工場の社員全員に腹が立ちます。「(国名)君」って。でも、彼らもまた非正規雇用や低賃金に喘ぐ、この国の疲弊した労働環境から生み出された人々です。

 一方で、「もうあんな辛いのは嫌だ」という妹の叫びが悲痛に響き渡ります。

 彼らはどうすれば幸せになれるのか? 劉の慟哭に胸が締めつけられます。

 この国が、「人が人らしく生きられる社会」になってほしい。そう切に願います。

 監督・脚本を務めた三野兄弟、非常に鋭い視点と豊かな映像を持ったコンビだと思いました。次回作がとても楽しみです。
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