新年早々すばらしい作品を見てしまった。ギリシャのビーチに一人訪れるレダ。娘と思われる女性から電話を受けるので、家族がいることはわかるのだが、なぜ孤独に夏休みを過ごしているのか分からない。ホテルの部屋の腐った果物、部屋に入り込むセミ、背中に落ちてくる松ぼっくり、デッキチェアから移動してくれと言い出す大家族。不穏な空気が満ちる中、レダは大家族が連れている小さな娘から目が離せなくなる。やがてレダの回顧が挿入され、家族にまつわる過去が明らかになる。
将来子どもを授かったら、と考えたことのある女性ならば、レダの気持ちは痛いほど理解できるのではないだろうか。仕事に熱意を持っている一方で、目の前にいる子どもたちの面倒を見なければならない。夫は仕事を言い訳に子育てを手伝わない。追い詰められていく若いレダの表情がとても痛々しい。私たちの周りには「結婚すれば幸せになれる」という物語に溢れているけれど、現実はそうではないと示す傑作だった。
