MrFahrenheit

祈りのもとで 脱同性愛運動がもたらしたもののMrFahrenheitのレビュー・感想・評価

3.8
アメリカにおける同性愛者の性的指向を異性愛に”矯正”するconversion therapy(転向療法)の過去と現在を追ったドキュメンタリー。

一部の教会によるconversion therapyが今までどのような結果を当事者にもたらしたかは知識として持っていたが、ex-gayというパワーワードがナチュラルに飛び交う様子を実際の映像で見るのは恐ろしかった。

科学的、医学的にも転向療法は根拠がなく有害であると結論は出ており、いくつかの国では違法ですらあるが、未だアメリカで形を変えながらこうした団体が存続していることにも驚く。(一部の州法では禁止)

右派政治家と教会の繋がりに触れる場面があるが、欲を言えばここをもう少し掘り下げて欲しかった。右派政治家と特定の宗教の親和性の高さは世界で散見される。それが何をもたらし、歴史はそれをどのように評価するのか。今後社会が進む方向は明らかに思うが、負の歴史を多くの人がアクセスできる映像記録で残すことには価値がある。ラストのテロップの重さは命の重さであることを忘れてはいけない。

我が国でもLGBTQの人権やジェンダー平等からは程遠い非常識な発言をして炎上を繰り返す自民党の政治家にも見てもらいたいが、彼らの主張の後ろ盾もまた日本会議や統一教会といった宗教団体。人権を認め、科学や医学に基づいて発言するのは主義主張以前の問題だと思う。