MrFahrenheit

燃ゆる女の肖像のMrFahrenheitのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.5
最初からぐいぐい引き込まれて、気がついたら終わってしまった。
18世紀という時代的にも許されなかった女性同士の純愛。女性が主体性を持てない社会の理不尽さ。それに抗う手段としてのシスターフッド。男性はスクリーンに殆ど映らない。セクシュアリティやジェンダー不平等が未だ解消されていない現代にも向けられる痛烈なメッセージが、静かに、はっきりと浮かび上がる。絵画的、文学的な作りの中に散りばめられた抽象的、象徴的なイメージが、散らからずに結びついて形となり心に残る。

性描写も少しユーモラスだったり、リアルだけど下品にならない匙加減もセンスを感じた。全体を通じて静かなトーンの中に鬼気迫るものがあるが、セリーヌ・シアマ監督とエロイーズ役のアデル・エネルは元パートナー同士だと鑑賞後に知り妙に納得した。”The most personal is the most creative.” というスコセッシの言葉が頭をよぎる。個人的であり政治的でもあり、同性愛を描いた映画であり、フェミニズムのメッセージを帯びた映画でもある。古くて新しい。静かだけど力強く、美しく心に響く映画だった。