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コーダ あいのうたのhikarouchのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.1
さ い こ う !

設定を聞けば思い浮かぶような超王道なお話なんだけど、でも超王道のストレート真っ向勝負でちゃんと三振を取れちゃう、堂々たる迫力を感じた。

物語後半のコンサートのシーン。このタイミングで初めて我々観客に無音世界を体験させるのか!というのが超シビレた。そしてそこでは聞けなかったルビーの歌も、ちゃんと後で聴けるようになっている。父親が喉に手を当てて。なんて素晴らしい演出。

「歌うときにはどんな気持ちだ?」というMr.V先生の質問に応える場面も、余計なセリフなんてなくても、とても多くのことを語ってくれる名シーンだった。このMr.V先生も、めっちゃ良かったなあ。

ラストの入試歌唱審査で手話を交えた瞬間、「うわー、ファンタジーやっちゃったなー」と頭の左脳では思いつつ、さいこーありがとーって思いながら右脳でポロポロ泣いてる自分がいた。エンタメ。これでいいのだ。

今回、ろう者役をろう者俳優が演じているのが素晴らしいという一方で、CODA役のルビーをCODA俳優が演じていないことに対しての批判もあるみたいなのだが。それって、具体的に適切な俳優がいるのかね?今回のエミリア・ジョーンズを超える演技と歌と魅力を兼ね備えた未成年のCODAの俳優が?というか、彼女のこの演技を見て「この役は君じゃない方が良かった」って言えるのか?正気か?と、熱くなってしまうほどに、素晴らしい演技だった。

歌のレッスンが、要するに「腹から声出せ」に終止してるのはちょっと歌モノとしてナメ過ぎ感はあった。あと、歌が好き=音大進学なのかというのも疑問はあるし、音大試験って歌一発で決まるのかってのも違和感があった。でも気になったのはそれくらい。

パパもママもお兄ちゃんも、みんな最高だった。人物がよく描けている映画が好きだ。
特にお兄ちゃんは、同じろう者の両親から生まれたのに、自分は聾者で妹は聴者ということも、色々思うところがあるんじゃないかね。そういうの、分かりやすいセリフにはならないけど、端々から感じられて良かった。
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