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グランツーリスモのhikarouchのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
1.4
この映画しょうもな!!!!!

モータースポーツの描き方としてとんでもなくピントがずれているという上から目線の指摘以前に、この作品の作り手は人間の命を何だと思ってるの?

ニュルブルクリンクで起きた悲劇的な事故。これは実際の出来事であり、それが劇中に出てくることは問題ない。しかし、主人公は少しの間落ち込んだ後に、コーチのキレイゴトスピーチで全ての悲しみを忘れ去りその後一度も被害者のことを思い出すことすらない。というか、作中ではこの犠牲者がどういう人物だったのかすら全く示されないし、主人公もその家族の元へ訪れたりもしない。いくら自身に責任が無かったとはいえ、自分が運転していた車で人が死んでいるのに、この人はどういう人間なの。そして、この映画を作ってるのはどういう人間たちなの。もうこの時点で、この作り手たちは全く信用ならない。

このシーンを描くにあたり、ドライバーのヤン本人の了解を得たようだが、本当に話に行くべきは犠牲者の遺族でしょ?もしこの作品を犠牲者の周りの人々が見たらどう感じるだろうか。

事故の原因にしても「ドライバーに責任はない」のは良いとして、じゃあ何が原因なのよ。そこが不明のまま同じ車でレースに出続ける(ように作中では見える)のは一体どういう了見なのか。

さらに事実を調べると、実際にこの事故が起きたのは、主人公のヤンがもうドライバーとして何度もル・マンに出場し、その地位を確立したあとの出来事。GTアカデミー卒業の4年後のことだ。そうやって時系列を敢えて改変してまでこの事故をドラマの道具として利用した上でこの扱いは本当に吐き気すら覚える。


レースどうこうは抜きにしても、物語作品として終わってる。本当に酷い作品。


で、レースの方は良く描けてるかというと、こっちも相当に酷い。
そもそもモータースポーツってのは、ドライバーの個人スポーツではないのよ。マシンの開発から、ストラテジストやメカニックなどのチームプレーで初めて結果を出せるわけ。その点をこの映画は一切描いていない。このチームの人たちはいったいどこから湧いて出たの?この質の高いマシンは誰がどうやって開発したの?マシンはドライバーのメンタルだけで急にスピードが出たり落ちたりしないのよ。こんなの、子ども向け映画の「カーズ」以下じゃん。

6秒も差があるのに最終コーナーで追い抜けるわけないし、理由もなくストレートでガンガン抜いたり抜かれたりすることはないのよ。レース中にオーバーテイクしたら片手離してガッツポーズとかあり得ないし、ちょっとサーキットをジョギングしただけでレーサーに必要な体力や筋力がつくわけがないし、レース中の無線でドライバーにガンガン怒鳴りつけるチームプリンシパルもいるわけない。ただでさえ極限状態でアドレナリン出まくりのドライバーに、あんな火に油注ぐようなことしたらそれこそ事故の元。

ああ、この作り手は、モータースポーツのこと全然勉強してないし、全く愛情もないんだなあというのがバレバレ。モータースポーツナメんなよマジで。

日本人として更にとっても残念なのが、この映画が日産やソニーという日本企業が全面的にバックアップしてる映画だということだね。

ほんとにもう、久しぶりに見たわこんな酷い映画。これに高評価がついてるFilmarksも、どうかしてるね。
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