ちょげみ

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のちょげみのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.8
鬼太郎の誕生秘話というか前日譚を描いた作品。

ストーリーとしては、1950年前後の日本において絶大的な影響力を持ち、日本の財政界を裏で牛耳っていた龍賀一族の首領である時貞が亡くなり、その跡取りを決するため龍賀一族が支配する哭倉村に集められた一族達が醜い争いを繰り広げる、というもの。


超トップダウン体制であり、一族の長が全ての権限を持つゆえに起こった悲劇。
一族の繁栄のために蔑ろにされた女性達や、薬の開発のために犠牲となった幽霊族(鬼太郎父の一族)や社会からつまはじきにされた人々の怨念の集合体が澱のように沈み、ついには弾けてしまう。

人間の業や旧態依然とした会社の圧力によって押しつぶされた人々の怨念や怨嗟を描いた作品であり、今どきあまり見ないような、懐かしさも覚えるようなストーリー展開ではあったが、随所に工夫を凝らした恐怖演出や昔見たゲゲゲの鬼太郎の思い出補正も相まって、画面にのめり込むようにして最後まで楽しむことができた。


ただ、自分が一番(個人的に)感心したのは、ダブルクライマックスともいうべき展開。

本作は序盤、鬼太郎にインタビューを試みようと廃村に迷い込んだ記者が地下で不気味や人形や血痕のついた大量のベッドを見つけ、そこからシームレスに70年前のシーンに移行。
それから後半にて、龍賀一族である沙代の恨みつらみが爆発して暴走、地下に集まっていた人々を血祭りにあげる、そして沙代は...という展開で、序盤の謎も回収されたことでめでたしめでたし、と思いきやその次にラスボスとの対決がある。
正直、序盤でぼんぼん跳ね回ってた謎の肉塊の存在や鬼太郎父の妻の存在を完全に失念していた自分の記憶力のなさの問題も間違いなくあるけれど、(個人的には)クライマックスを飾るに相応しい強いカタルシスを2回味わえた。
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