遊園地で一人の老人が、無視され、拒絶され、暴行される。それだけの53分間。プロローグとエピローグのおかげで枠が明確に固定されているため多様な見方をするような楽しみ方はできなかったが、駄作とは切り捨てられない。
法と資本主義で固められた国家をアミューズメント・パークにすり替え、あらゆる悲劇を次から次へと照射する。チケットのために貴金属を売る老人。相手の過失によるゴーカートの衝突で加害者にされる老人。チャカチャカと場面が変わり、その度に新しい「老人(特段富裕層ではない老人、というのがポイント)いじめ大喜利」が展開される。自分はチャップリンに代表される黎明期のサイレント映画の感じを想起した。
唯一老人が歓迎されていると思われた場所の正体。老いたらこうであれ、あなたたちのことは若年・中年層が決める、という社会を徹底して意地悪く切り取る。
夢も希望もあるはずの社会(アミューズメント・パーク)から、なんとなく、そして意味もなく排斥される老人たちが苦しい。
あなたもいずれ老いるのだから今も助け合おうよ、と第四の壁を突破して呼びかける。道徳の授業でがんこちゃんやバケルノ小学校を流すくらいならこれを流してもいい(よくない)。
今これが公開されていたら、若者を悪く描いた老害のプロパガンダとボコボコにされていそうな気もしなくもないので、このテーマでこの年代に製作されていたのが素晴らしいと思った。