ぐら

14歳の栞のぐらのレビュー・感想・評価

14歳の栞(2021年製作の映画)
3.8
初めの幼少期〜中学までの走馬灯のような数分の時間、自分の戻れない過去の時間で苦しくなった

ひとりひとりに密着していく本編、こういう子って高校でもうまくやっていけるだろうな、こういう子はちょっと苦労しそうだな、この子は美人になりそうだな、ってそれぞれに感想を持ちながら見ていて、ふとずっと自分の今の価値観と今の自分のものさしで見てしまってるなと思った。
自分の子供だったらどう育てたいかのサンプルみたいにみてしまっていた。
自分の子供だったら部活にはちゃんと入ってほしいけど、選手を目指すと先がしんどくなってしまいそうだから現実は見てほしいなとか。でも初めから公務員目指すのはちょっと夢なさすぎるかなとか。自分勝手にそれぞれを品定めしてしまって、ずっと距離がある状態で見ていた。

過去を思い返してむず痒くなるかどうかで、自分が過去を過去として消化できているかを測るバロメーターにする作品だと思っていたけど、自分の中学の時のことがほんとうに思い出せなくて、何を考えていたのか、どういうことがあったのか、小学校の後半と中学校、高校の前半あたりの記憶が混ざっていて、中学生の14歳の時間をどう過ごしていたか、何を考えていたのか、記憶の中からどうしても引っ張り出せなかった。
その時期の記憶を引っ張り出せなかった理由は多分もうひとつあって、要所要所で感じる時代の差だと思う。このクラスの全員の話していること、選ぶ言葉が自分の14歳を思い返して比べてみて、大人っぽいなと思った。
ネットで多くの情報が得られることが当たり前になっている今の14歳の言葉は、ネットから学んだであろう大人らしい言葉や、諦めや冷めた目線の言葉、自分たちの時代よりも大人ぽい印象だった。
実際が大人なのかは分からない。でも少なくとも、多くの情報が得られる環境で育ってきた今の14歳は、あの頃の自分たちよりもよく周りが見えていて、見えすぎているからこそ冷めた目で見てしまったり、自分の将来に悲観的だったりするんだろうなと思った。

大人になるってなんだろう。子供から大人になる瞬間っていつだろう。
14歳たちの言い分を見ながら、ずっと考えていた。
一時期、大人になる瞬間について考えていた時期があって、周りの人たちの思う、大人になったと思う瞬間について話していたけど、うまく折り合いをつけられる、諦められるようになったことだと思うと話している人が大体だった。(そこまでストレートな表現ではなかったと思うけど)
“大人になる”は、今までの自分から変わった瞬間なのかなと思う。
自分含め、昔の時代の人たちの学生時代は、今ほどインターネットも普及していなくて、今ほど情報もなくって、見えている範囲も狭くって、自分のことで精一杯で、いろんなことが諦められなくて、もがいている時間があったからこそ、“大人になって”見える範囲が広くなって、周りとの関係性と自分の存在ややりたいことの折り合いをつけることに慣れていって、結果、諦めや冷めた目線になることが、大人になる瞬間になっていたのかなと思う。
反対に、今の時代の14歳はインターネットの普及が進んだ世界で多くの情報が得られる環境で、周りがよく見えていて、自分よりも周りの空気を優先できて、初めから諦めていて、どこか冷めている。そんな今の14歳たちが大人になる瞬間は自分たちの時代の逆で、見えてる世界が狭くなるくらい、周りを優先できないくらい自分の意志ややりたいことがくっきりした時なのかな。

劇的な主人公はいないし大きなどんでん返しもないけど、それぞれがそれぞれの人生の主人公で今も物語じゃないそれぞれの人生が継続してるんだけど、エンドロールで栞聴きながら、みんなどんな大人になるのかな、10年後の続編早く見たいなって、最後まで物語として作品として見てしまった。見ていてずっと自分の中で14歳の時間との距離があって、ほんとうに戻れないんだなって思った。
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