KnightsofOdessa

Mandabi(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Mandabi(原題)(1968年製作の映画)
3.5
[セネガル、絶望的なたらい回しと無限湧き金せびり] 70点

センベーヌ・ウスマン長編二作目。監督本人の同名小説の映画化作品で、母国語であるウォロフ語での初監督作。西アフリカ初のアフリカ言語による長編映画らしい。主人公イブラヒムは妻2人子供7人と共にダカールの住宅街に暮らしている絶賛失業中の中年男。そんな彼の下に、パリで働く甥っ子から25000フランの為替が送られてくる。意気揚々と換金しに行くと、身分証明書がないという理由で断られ、警察署に身分証明書を作りに行くと出生証明書を求められ、市役所に出生証明書を作りに行くと生年月日を求められ、生年月日を聴きに親族の家に行くと云々というたらい回しをされる。一方、文盲のイブラヒム一家が他人に手紙を読み上げてもらったことで、近所には臨時収入のことが知れ渡っていて、ええかっこしいのイブラヒムは二つ返事で代わる代わるやって来る彼らの借金の申し出を受け入れる。借金とは云えど、少量を大量の人間が借りていく感じで、ソシャゲの課金みたいにハードルの低さからいつの間にか大金が消えていくイメージである。

そんなブラックコメディの裏側では、ダカールの平屋地区に暮らす一家の日常生活が描かれる。男たちは基本的に家の中で食事をするが、妻たち子供たちは屋外の日陰で生活している。食事中も一区切りつく度に神を称えている。ニートなので日中は眠いときに寝ているが、それで礼拝をすっぽかすこともあり、妻に当たり散らす(妻も軒先で寝ていて礼拝をすっぽかしている)。生年月日を聞きに行った先の甥っ子ハマスは郊外に一軒家を構える小金持ちで、木造家屋の地べたに座って伝統衣装を着るイブラヒムと違い、しっかりとした作りの家のソファに座ってスーツを着ている。こういった生活描写の細やかさが、荒唐無稽なブラックコメディにリアリティを与えている。
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