hikarouch

ボクたちはみんな大人になれなかったのhikarouchのレビュー・感想・評価

4.0
正直、めっちゃくちゃ大好物だった。見てる間ずっとヨダレ垂らしてた。(心のなかで)

でもこの映画を大好きと言ったり、傑作と褒め称えるのは、ちょっと抵抗がある。それがなぜなんだか、見た直後はよくわからなかった。
少し時間を置いてなんとなく思うのは、この映画で描かれている過去と未来が、「金も無くまだ何者でも無いけれど、夢と希望のあった」過去から、"いろいろあって"、「金も社会における地位もそれなりに手に入れたけれど、夢も希望もなくなった未来」、という典型的な二項対立になっているところに、引っかかっているのかもしれない。それって、まさに”フツー”じゃん。って。
もちろんこの映画が、過去と未来の2点の話だけをしているのでなく、まさにこの「いろいろあって」の部分にこそ重きをおいていて、そんなアホみたいなことを言いたいわけではないのはわかってるんだけどね。

実際、このいろいろあっての描写が、どれもこれも、最高に気持ちよかった。出来事そのものは楽しいことばかりではないのに、このバキバキにキマった画と、俳優たちの素晴らしい演技、というか登場人物のキャラ造形、着ている服・髪型、時代を象徴する選曲センス、渋谷・原宿・新宿の街並みとその移り変わり、そしてもちろんアザとすぎる時間逆回しの構成・編集。

それにラストの着地も、希望がないような未来でも、ふとしたキッカケで過去を思い出し、昔の自分を俯瞰で見て、そのあまりにダサくて真っ直ぐな姿に、もう一度初心に帰るような、いろいろあった自分の人生を認めてあげるような、そういうことだったのかもしれない。「子供の頃、今の自分になりたいって思ってた?」という問いへの答えでもあったのかな。

役者陣では、森山未來は言わずもがな、東出昌大がめちゃ良かった。この人、実生活のスキャンダルで裏の顔(?)が表に出たことで、役の幅が広がったような。今がキャリアハイって感じで、若い頃から最後の渋い感じまで、全部最高だった。キャバクラ1回おごりと引き換えに仕事引き取ってくれるくだりとか最高。森山未來と東出昌大のバディものってのも、かなりヨダレポイント高い。

主人公の佐藤くんは自分とはちょっと世代も違うし、過ごした青春のエピソードもあんまり重ならないんだけど、それでもコロナがあって、友達と遊ぶ機会がほぼ絶滅してしまっている今、ノリでドライブに行ったり、夜遊びしたり、飲んだ後歩いて帰ったりっていうひとつひとつが、何かとても尊く感じてしまった。
(作り手が明らかに観客をエモくさせに来ているアザとさを感じるので、この感想にエモいという言葉はしんでも使いたくないのだよ。)

逆回しの構成ゆえ、2回目も絶対に楽しい作品。劇中で最初に「フツーだね」って言ったのは、誰が誰に対してだったか。とかね。
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