三國

ボクたちはみんな大人になれなかったの三國のレビュー・感想・評価

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失われた30年(くらい?)を実人生として歩いていて、跡には「なんにもない」ってくらい失い続けてきたような気がする。
時間。
失った時間の再構成はロマンだから、今現在を楽しんだり、泣いたり苦しんだり、笑ったりっていう営みじゃない。慰み事。引きこもるってこと。偽りの、だからこそ至上の美しさ。それを嘘だと看破するなら、やっぱり今日までの30年間はなかった、そう言い切れるくらい空虚だったってことになる。
でも、それを生きた人もいるわけだ。
取り替えの効かない己の一生を、気が付かないうちにかもしれないけれど、とにかく空無な時間の浪費にベットした人がいて、それだけは空虚じゃない筈だ。
このフィルムにはそういう価値があると思う。

ベットシーンがすごく、よかった。
あんな切ないのないよ。。
かわいい。つよい。よわい。あれでいい。素直で、不器用で、ちょっとやさしくて、少し強引で、もう、絶対訪れないこの一瞬のために緊張して、心から味わって、
馴れなくていい。巧拙でもない。

劇場を後にして、街の風景が少し遠くになった。これが映画を観ることの心地よさだ。
距離がようやくとれる、喧騒から。
自分だけの時間が還ってきた。
帰りがけに、絵本を一冊、買いました。
三國

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