観よう観ようと思っていたのに月日はどんどん過ぎてあと2週間後にはアカデミー賞授賞式なので、仕事を定時になった瞬間打刻ボタンをターンッ！と押して労働から解放され、映画館の中にあるアメリカの壮大な荒野へ。観終わったあと何故か気持ちがどこかすっきりしていたデトックスムービー。
基本的に劇中の会話もそこまで多くなく、比較的静かな作品だしドラマチックな大きな展開があるわけではないのだけど、何故かずっと集中して観ていられる不思議な映画。フランシス・マクドーマンド演じるファーンとずっと一緒に寄り添って旅に出ているような108分。フランシス・マクドーマンドの表情ひとつひとつがまたとっても良くて、他の主演女優賞ノミネートの作品をあまり観ていないけど、この人は『スリー・ビルボード』の時も思ったけど演技をしていないように見える演技がめちゃくちゃ上手い。ノマドの皆の自然な語りもこの物語にリアリティーを持たせるには十分すぎるほど自然でどこか力強く、途中からドキュメンタリー映画を観ているようだった。
アメリカの自然の魅力が前面に出ているけどその背景に様々な人たちの気持ち（自由であることの定義やその自由を身軽や身勝手と思われてしまうさま）や社会問題（短期労働者の高齢化、サブプライムローン問題など）が描かれていて、誰のどんな暮らしが絶対に幸せかなんて一概に言えないのだと思った。Apple Musicにもあるサウンドトラックがとても良くて、劇中で鳴らされるピアノとアコースティックギターの響きが素敵。旅と悲しみにはブルースがよく似合う。
