向いている人:邦画のコメディが苦手な人
この不景気日本で、こういう題材の映画ができるというのは、とても良いことだと思います。
邦画のコメディというと、最初は芸人のコントのようにポンポンポンと笑えるところを出して、途中から湿っぽい雰囲気になって、甘々な感じで終わりを迎える、というイメージがあったのですが、本作は違いました。
予告編どおり、序盤は「父の高額な葬儀→妻がバイトをクビ→夫が失職→娘が結婚→浪費家の姑が同居」という感じで、あれよあれよと状況が悪化していく面白さもあって楽しいです。
ところが、中盤以降どうなるのかなと思いきや、「家計を思いやる嫁VS浪費家の姑」という構図ではなくなり、なんと「読め&姑のバディもの」になっていくというのが意外でした。とある事情で人を騙すことになるのですが、その部分の面白さときたらすごいものがありました。
とはいえ、扱っている題材が題材なだけに、超絶コメディなんですがやはりシビアな社会問題、というより自分のお財布事情に思いをはせてしまいます。
そんな中で、どうやって着地するのかな…と思ったのですが、意外や意外、甘きに流れず、かといって「老後の資金」という全国民共通の問題の深刻さだけをアピールするでもなく、ちょっとだけ希望を持たせるなかなか良心的な着地でした。
天海祐希さんが八面六臂の大活躍。個人的にはドラマ『離婚弁護士』『BOSS』で魅せた、自立心の強いプロの仕事人、という感じの雰囲気も好きですが、今回はかなり軟らかいお芝居だったのも印象に残りました。
そして、天海さんとコンビを組む草笛光子さんも、程よい緊張感と軟らかさをもった絶妙な雰囲気で、時に怖く、時にひょうきんに、時に優しそうに見えるという配合が完璧だったと思います。
他のキャストも、夫役の松重豊さんをはじめ良かったですが、個人的には市役所の職員役でアノ人が出てきた時に、飲み物を噴き出しそうになりました。出てくるタイミングも完璧ですww
個人的に、邦画のコメディには苦手意識があったのですが、本作を見て、邦画のコメディも見てもイイかなと思える、なかなかの良作でした。
原作は未読ですので、原作を読まれた方のご感想も聞いてみたいです!