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バビロンのhikarouchのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.2
自分はチャゼル監督の「ラ・ラ・ランド」がとても好きなんだけど、本作を見終わってみて一番驚いたのが、この映画が「ラ・ラ・ランド」と似ているところが非常に多かったこと。でも、「ラ・ラ・ランド」のが好き。断然。

冒頭で渾然一体となっているから分かりづらかったが、本作は実はコンラッドというかつてのスターが落ちぶれていく話と、ラロイ&マニーという若者たちがそれぞれに夢を追いかける話との2本の物語が並行して語られる。

「ラ・ラ・ランド」に似ているのはもちろん後者。物語の核にあるテーマと、なんなら劇伴の楽曲までセルフオマージュかと思うほどに良く似ていた。そして、こちら側の話、とくにクライマックスで明かされるあるキャラクターの秘めた想いが明らかになったときに、「うおお!ええやんええやん!!」と心の中のザコシショウが叫んだ。チャゼルという監督は実は恋愛物語を撮るのが一番上手いのではないかと思った。

まあしかし、チャゼルは映画というか、ショービズ界とその中でもがく人々の話が好きだなあ。過去作以上に本作で強く感じたのは、「これ、観客に向けて作ってないよね?」ってこと。明らかに自分ないし業界内の人々に視線が向いているんだよな。

汚物、裸体、吐瀉物とかはただただ汚いし、演出的な新鮮さもないしで、シンプルに不快だった。

主要キャスト3人の素の魅力が凄いし、映像や音楽も良いので3時間見れちゃうけど、でも映画としては、これって莫大な金と、一級品の技術を投じた、趣向を凝らした壮大なガラクタだよな、とも思ってしまう。
ブラピにしてもマゴロビにしても、どっかで見たことあるキャラの焼き直し劣化版て感じに見えちゃったな。

これは周りの評価だけど、映画愛、映画愛うるせーよってのも思っちゃうのよね。映画作ってる人なんてみんな映画愛あるに決まってんだろっていう。どっちかというとチャゼルは、映画"業界"への愛と憎悪なんだよね。そこが非常に受け止めづらい。
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