しゅんすけ

バビロンのしゅんすけのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.0
「バビロン」

ディミアン・チャゼル監督最新作。

前々作の「ラ・ラ・ランド」、前作「ファースト・マン」が大好きだったので、(「ラ・ラ・ランド」は生涯みた映画のベスト10に入れてるぐらいに好き)期待したんですが、ハーバード大卒で、お父様が科学者ということもあり、「天才」「優等生」イメージのチャゼル監督からは想像できない下品・悪趣味・エログロのオンパレードでビックリしました。

 R15+指定ですが、R18+でもよかったんじゃないかと思いました。(ドルビー・シネマ上映では、ぼかしが無いため、R18+指定で上映されてたとのこと)

 はっきりと連想したのは、1970年代のポルノ映画業界の栄枯盛衰を描いたP・T・アンダーソン監督の名作「ブギーナイツ」(1997)でしたが、「ブギーナイツ」よりももっとごちゃついてて、何がなんやらで観にくく、188分の上映時間は正直しんどかったです。(「RRR」とほぼ同じ上映時間だけど、苦しい時間が多かった)

 サイレント映画→トーキーへの切り替わりを描いたということで、フランス映画の「アーティスト」(2011)とほぼ同じような話の内容なのですが、「アーティスト」がサイレント、白黒というあえて現代にサイレント映画をやってみせるという「古き良き映画」へのリスペクトがあったのに対し、「バビロン」は撮影手法のめんどくささなどは当時ならではなんだろうな~と思いつつも、マヌエルとネリーという主人公2人の成り上がりと破滅の話は古さを感じないし、(終盤あたりの破滅や逃避行はオリヴァー・ストーンっぽいなと思った)「昔はドラッグとセックスとハラスメントまみれのヤバい時代でしたよ」っていうのに軸がおかれている印象でした。

 ラストにやっぱり仕掛けを持ってくるのはチャゼル監督の真骨頂で、3時間近く悪趣味満載のこってり映像観せられた後に、あの映画史をたどる(映画の誕生→現在の3Dデジタル映画)映像を見せられると「あれ、俺は今何を観てるんだっけ? よくわかんないけど、なんかスゲー」という感じにさせる力技は唯一無二だと思います。

 観る人によって、100点or0点になりやすいタイプの映画ですが、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」や「ブギーナイツ」のようなタイプの栄枯盛衰、破滅満載の映画が好きな人には良い1作なんじゃないでしょうか。クライマックス以外映画史詳しくないとわからないみたいな映画でもないので、「エログロ耐性あり・食後に観ない」という点に気をつけて観るといいと思います。