これ好きだ。
半分は物語映画、半分はアート映画、半分はドキュメンタリー。足して1超えちゃったけど、そんな印象。
モノクロ映画、好きだなあ。本当に画の美しい映画。監督のマイク・ミルズ自身がインタビューで語っていた「(モノクロ映画は、)現実そのものではなく、現実についてのアートみたいな感触」というのが、すごくしっくりとくる。LAのビーチやNYの鉄橋のある風景に、デトロイト、ニューオーリンズ、美しかった。。劇場で見てよかった。
子供に慣れない中年男性が子守りをする話ってこれまでも結構たくさんあったと思うけど、今作はその中でもまた新しいスタイルを打ち出して、それに成功していると思う。子どもという生き物の恐ろしさ、子育ての逃げ場のなさをピリっとシビアに、少しのユーモアも混ぜて上手く描いていた。そうそう、子どもってほんとにコレ、って思う場面がいくつもあった。
大人に向かって、I don’t need you.(パパなんていらない)とか Get off!(どっか行け!) とか、相手の心を突き刺すような言葉を彼らは容赦なく投げかけてくる。それは彼らが大人のことを、本気で戦わないと敵わない相手と思っているからなんだと思う。だから言葉のナイフにも全く手加減がないんだよね。言われる方は結構食らうんだよこれが。
気づくと目の届かないどっかに行ってしまうというのもほんとにそうで。自分の身の危険をかえりみない(というか経験が少ないからリスクを考慮できないんだけど)行動を平気でしてくるから、大人は自分の恐怖とパニックを怒りに変換して子どもに当たってしまうんだよね。
いやーこの子役のWoody Normanの演技は素晴らしかった。おまけに彼はイギリス人だから、アメリカンアクセントも演技でやってるんだよね。末恐ろしいわ。
このやっかいな子どもに加えて、メンタル面に問題を抱える夫のケアも必要で、そりゃ妹は大変だよねってのを、兄のジョニーの視点から語っているのも良かった。ジョニーの視点=観客の視点になるから。
このジョニーとジェシーのふたりの顔の造形や出立ちが良すぎて、それだけでも画が保つ。ずっと見てられるんだよな。
合間合間に挟まれる子どもたちのインタビューも興味深い。これは台本ではなく、ほんとのインタビューだったみたい。非常にミクロなジョニーたちのストーリーと、いまアメリカという国で起きているマクロなストーリーとを緩やかに繋げるような絶妙なバランスだった。
子どもに対する接し方も考えさせられた。「今日は何したの?」と行動にフォーカスした会話をしがちだったけど、何を考えたか、どう感じたかをもっと聴いてあげないとな。
そして本作は、一度みただけで全部分かった気にはならないのも良い。またそのうち、見返そうと思う。その時にはきっとまた違ったものが見えるだろう。