むらむら

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEのむらむらのレビュー・感想・評価

5.0
クルーズ「今回も俺っち、大活躍だったっしょ? ホランドくん」
ホランド「せ、先輩! さすがっす!」
クルーズ「おうよ」
ホランド「先輩、もう60歳っすよね」
クルーズ「おうよ」
ホランド「普通なら赤いチャンチャンコ着てる年齢っすよね」
クルーズ「おうよ」
ホランド「ハンクスさんなんて先輩と6歳しか違わないのに、爺役ばかりやらされてるじゃないですか」
クルーズ「あいつは最近、この『ハリウッド トムの会』にも来てないしな。もうオワコンってことで」
ホランド「それに比べても、昨年の『トップガンマーベリック』に続き、先輩のヒーロー感、最強じゃないっすか」
クルーズ「あたぼうよ! まだまだ若いものには負けへんで」

ホランド「……せっかくなんで、Z世代 代表としての意見を言わせて頂いてイイっすか?」
クルーズ「なんでもええで」
ホランド「今回、シリーズ第7作だってのに、めっちゃ最新のトレンド入ってますよね」
クルーズ「例えば?」
ホランド「まず、敵がAI」
クルーズ「お、いいとこ気付いたね」
ホランド「暴走して世界を支配しようとするAIが、しかもロシアの原潜に眠ってるって、めっちゃ今っぽいですよね」
クルーズ「常に俺っち、時代を先取りしてるかんね」
ホランド「タイトル出るまでに約30分もかかるのは、昨今流行のインド映画を意識してますよね」
クルーズ「ん? そ、そうかな?」
ホランド「そして、世界を股にかけるスケール感。アブダビ、ローマ、ヴェネチア、ノルウェーと、行きまくりで」
クルーズ「世界を股にかけるスパイってことで」
ホランド「もはや『クルーズさんと行くヨーロッパ周遊8日間』の宣伝ビデオ見せられてる気分でした。クルーズさんを追いかけてきた昭和世代の女性たち、めっちゃ喜んだっしょ?」
クルーズ「ま、まあね」
ホランド「出てくる女性、みんな美魔女の熟女だし。熟女を追いかけて砂漠からヴェネチアまで行くのも、熟女と先輩が手錠で繋がれるのも、先輩が熟女と乗る車がやたら小さいのも、全世界の熟女ファンに向けたマーケティングっすよね。さすがっす!」
クルーズ「……」
ホランド「まぁ僕はゼンデイヤ命なので、熟女に囲まれる必要はないですけど」
クルーズ「聞いてないから」
ホランド「唯一、僕的にもカワイイ! と思ったのは、ポム・クレメンティエフ演じる殺し屋、パリスちゃんだけっすかね」
クルーズ「ほかの子たちも最高だけどな」
ホランド「いやパリスちゃん一択っしょ。特に、ローマでのパリスちゃんと先輩たちのカーチェイスは、先輩たちが市内を縦横無尽に駆け巡るんで、一般のローマ市民が蜘蛛の子を散らすみたいに逃げ惑ってて面白かったっす」
クルーズ「……」
ホランド「おっと、いまのは僕の当たり役である『スパイダーマン』と引っ掛けたギャグじゃないっすよw」
クルーズ「聞いてないから」

ホランド「ローマの次に来たヴェネチアも良かったっすね」
クルーズ「お、嬉しいこと言ってくれるね」
ホランド「ただ、あの先輩たちが悪人たちと一同に介するクラブ。あんなに厳重にボディチェックしてるヴェネチアのクラブなのに、気付いたらみんな日本刀とかナイフとか、あまつさえ日本刀みたいなの出してたの、さすがにガバガバじゃないっすか?」
クルーズ「そんな細かいことどうでもええやろ。それより、無数のローソクの明かりの中で、ヴェネチアの路地を駆け抜ける俺っち、かっこよかったでしょ?」
ホランド「あー、あのシーン」
クルーズ「お、印象に残ってる?」
ホランド「さすがクルーズ先輩、最新トレンドに抜け目ないッスよね! あの無数のローソク、作ってるの、絶対キャンドルジュンさんでしょ? 」
クルーズ「えっ? いや、違うと思うけど……」
ホランド「いや絶対、キャンドルジュンさんっすよ。さすがっすねー。話題の取り込み方が半端ないッス」
クルーズ「……」

ホランド「ついでに言うと、出てくる登場人物みんな『謎の人物から依頼を受けた』って言うじゃないですか」
クルーズ「まぁ、秘密のミッションだからね」
ホランド「これ絶対、いま流行の『闇バイト』意識してますよね」
クルーズ「ええっ? そんなつもりは……」
ホランド「みんな高額の報酬を約束されてるし、黒幕はよく分からないし、みんな法律に反してるし、絶対、これ全員『闇バイト』ッスよ」

クルーズ「……も、もうそれはいいから、クライマックスの感想でも聞かせてよ」
ホランド「あの130回以上練習した、っていう崖からの飛び降りですよね」
クルーズ「そう、それ。ノルウェーまで行って撮ったヤツ」
ホランド「一言、凄かったっす」
クルーズ「せやろ?」
ホランド「でも、そのあとの列車での大乱闘が……」
クルーズ「あれも凄かったやろ?」
ホランド「そうなんですけど、ちょうど僕、先日、なんだっけな、似たような作品観ちゃって……」
クルーズ「ああっ、もしかして」
ホランド「あ、思い出した。『インディ・ジョーンズと制服のマッツ・ミケルセン』」
クルーズ「いや、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』。内容的には間違ってないけど」
ホランド「あ、それっすそれっす。あの冒頭も、似たような列車での戦いじゃなかったでしたっけ?」
クルーズ「あ、そ、そうだったかな」
ホランド「ぶっちゃけ、『鍵になる十字架』を探してるか『アンティキティラの時計』を探してるか以外、違わなかったですよ。強いていうなら、パリスちゃんがホント、出番少ないながらも大活躍してくれるところですかね。パリスちゃん最高っす」
クルーズ「……」
ホランド「熟女なんて暴走止めにいったと思ったらボンヤリしてるし。あんなんだと『まーんww』って笑われちゃいますよ」
クルーズ「……」
ホランド「それに比べてパリスちゃんの活躍ったら! ホント、パリスちゃんの活躍がなかったら、カギの取り合いばかりしてるから、『ミッション・インポッシブル カギ取り合戦』ってタイトルでも良かったんじゃない?って思いましたわ」
クルーズ「……サル蟹合戦じゃないんだから」
ホランド「でも全編に渡ってカギ盗まれまくってましたよね!? まぁいいか。……それより何よりあのシーン」
クルーズ「ギョッ。……ちょっと用事思い出したから失礼するね」

(と、崖から飛び降りて逃げようとするクルーズを、ホランドが手から糸を出して引き止める)

ホランド「それより何よりあのシーン、走る列車での激闘とクライマックス」
クルーズ「それがどうかした?」
ホランド「プレステの名作ゲーム『アンチャーテッド2 【黄金刀と消えた船団】』そのままじゃないですか?」
クルーズ「あ、やっぱりバレちゃってた?」
ホランド「そりゃバレますよ。なんせ僕、映画版の主演じゃないっすか」
クルーズ「そ、そうだったな……」
クルーズ「ヒドいっすよ先輩。映画『アンチャーテッド』の僕には上から目線で、あんなに色々と言っときながら( https://filmarks.com/movies/70049/reviews/129453031 )シレーっとゲームと似たようなシーン撮ってるなんて! 僕も続編でやろうと思ってたのに……」
クルーズ「まぁまぁ、そう、興奮しないで……」
ホランド「せっかく若々しいZ世代の僕が次世代のアクションスターになろうとしてるってのに、先輩とかが、思いつく限りのてんこ盛りな作品を200億円以上かけた大予算で、全部やっちゃうの、どうなんっすかね」
クルーズ「まぁまぁ」
ホランド「先輩の場合は、まだ体張ってるからいいっすけど、CGで若返った爺さんが、俺のやろうとしてることやってるのとかって、老害感ハンパないんすよ」
クルーズ「な、なんか、ホランドくん、今日は感情をムキ出しにしすぎちゃない? 普段のホランドくんと違うんだけど……」
ホランド「この作品だって、熟女ヒロインだらけだけど、絶対にパリスちゃんの出番を増やしたほうがいいっすよ。パート2では、パリスちゃんが全シーンに出演するように、パラマウントに対して署名運動しようと思ってますから……(と、ホランドの演説が続く)」

クルーズ「ハッ!? ま、まさか!?」

ふとクルーズが気配を感じて後ろを振り向く。

そこには、ホランドの思考を操っている、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のマンティスがいたのであった……。

(おしまい)
むらむら

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