むらむら

プリシラのむらむらのレビュー・感想・評価

プリシラ(2023年製作の映画)
5.0
読者の皆さんもおそらくご存知であろう70年代に亡くなった、とある有名ミュージシャン。彼は数々の名曲と鮮烈なパフォーマンス、そして奇行で今でも人々の記憶に残っている。

その妻であるプリシラさんの手記が、映画になるという。

U2のコンサートで偶然見かけたプリシラさん( https://filmarks.com/movies/114072/reviews/171405110 )を、記者は脳内インタビューすることに成功した。

■ 彼との出会いはドイツ

「彼と初めて出会ったのは、そう、私が14際の時。彼が兵役に来ていたドイツの駐屯地に、私の両親も駐在してたの。彼がドイツに来てるのは知ってたから、そうね、嬉しくなかったかというと嘘になるわね」

記者の脳内でのプリシラさんは、なんとなく高そうなソファーに足を組んで座っている。どうも、この映画の出来に満足そうだ。

「そしたら、『有名人が来るから』と、友人にパーティーに呼ばれたら、そこにいたのが彼だったの」

本人が語るように、プリシラさんは当時14歳。彼はすでに20代である。昨今、お笑い芸人が未成年を招いて秘密パーティーしていたという報道もあったが、もしかして、その日にすでに事をいたしたのであろうか。

「エッチはしてません(笑)。ただ、ベッドの脇に、他のドイツ女の書き置きとかあって、嫉妬したのを覚えてるわ」

デリヘル慣れした記者からすると、まさか女性を部屋に招いてセックスもフェラも手コキも無いというのは、にわかには信じ難い。だが、彼は辛抱強く、プラトニックなデートを続けたという。

「一緒に映画みたり、時計を飼ってくれたり。もちろん、両親には反対されたのよ。『あいつが本気なわけない』って。ただ彼がアメリカに戻ってから三年、何も連絡がなくなったときには、意気消沈したわね」

■ 再び、彼から連絡が

彼から突然、連絡が来たのは、プリシラさんが17歳のとき。

「コンサートがあるから、彼の住んでるメンフィスに来ないか、って。ファーストクラスのチケットを手配してくれたのよ。天にも昇る気持ちだったわ」

「彼と三年ぶりに会ったのに、彼ったら私を求めることもしないで、クスリ飲んで寝ちゃったの。そう、添い寝してあげたわね(笑)」

17歳のピチピチの少女がベッドに潜り込んできたら、未成年性交で逮捕される危険性があろうとも「我が人生に一点の悔い無し」と叫んでコトをいたすところだが、さすがは奇行で有名なミュージシャン。おそらく、プリシラさんと会う前にシコりまくって賢者モードで接していたに違いない。

「それからは彼の家に住むことになって。暇つぶしに犬の世話をしたり、毎日のように美容院いって、パーティーに参加してみたり。彼に手配してもらった学校は、『彼に合わせてあげる』って言ったらみんな答案みせてくれたから、カンニングし放題。車とかピストルも買ってもらったわね。ようやく、結婚したのが22歳のときだったかしら」

記者に言わせると、まさに絵に描いたような「玉の輿」。小さなアパートでカップラーメンを啜りながら、TikTokの楽しそうな動画を観るだけの記者の生活からすると雲泥の差だとしか思えないが、プリシラさんは相当、嬉しかったのではないだろうか。

「そんなこともないわ(笑)。確かに、他のファンの子たちに比べると、私が彼を独占してる、ってのは優越感あったわよ」

プリシラさんが妊娠するのに、さほど時間はかからなかった。子供が生まれそうだ、というときにも、病院に行く前にまつ毛の手入れは欠かさなかったというプリシラさん。庶民である記者からすると想像もできないが、それがセレブ婚の秘訣であろうか。

■ すれ違う結婚生活

出産したプリシラさんに、彼は急激に冷たくなったという。

「引き続き、スピリチュアルやドラッグにはハマってるし、気に食わないことがあれば椅子を投げてくるし。『大佐』とかいう、トム・ハンクスみたいな風貌のマネージャーの言いなりだし。この頃かしらね、別居を考えはじめたのは」

プリシラさんが別居するのに時間はかからなかった。彼女はメンフィスを離れ、ロサンゼルスに居を移したという。

「ロスでは、友達とお茶したりして、充実してたわね」

その後、彼が急逝。映画はそのあたりで終わるが、なぜか彼の音楽は一曲も使われず、ラストは映画「ボディガード」でも有名な「I WILL ALWAYS LOVE YOU」が流れて終わる。

「彼の音楽を財団が一曲も使わせてくれなかったので、まぁ、私の好きな曲で終わらせてもらうことにしました(笑)」

……世界的に有名な大スターの元妻の映画で、一曲も音楽を使わないなんて。

記者は以前、「インドで一週間、ビートルズと一緒に過ごした」だけのオッサンが作った「ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド」という作品を観たことがある。ビートルズの曲が一曲も使われないどころか、三分の二くらいがオッサンの自分語りで、映画館でブチ切れそうになった(https://filmarks.com/movies/104224/reviews/141564379)。

「彼の曲がない分、私が日本のカラテを習ってるシーンが入れてるので、そっちで楽しんでほしいわ。じゃあね」

そういって、カラテのポーズを付けながら、記者の脳内から立ち去るプリシラさん。実際に作品を拝見した記者は

「有名人の奥さんじゃなかったら、単なるヒマな金持ちの自分探しじゃねーか! チラシの裏にでも上映しとけ!」

と、呪いの言葉を発しそうになってしまった。

ただ、唐突にカラテにハマるプリシラさんが謎すぎて、最終的には★5をつけることにしたのも事実である。

読者の皆さんの感想は、いかがだったであろうか。あと今回、アイドルインタビュー風に書いてみたのだが、果たして内容が伝わったのか、自分でも甚だ疑問である。

(おしまい)
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