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街の上でのhikarouchのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
3.7
古着屋、建物の上の階にあるカフェ、古本屋、入りにく過ぎるバーなど、これでもかとシモキタ要素を感じさせる場所で、良くも悪くも奇人としか言いようのない、クセが強い面々が繰り広げる会話劇に、ちょっと笑いつつも、同時に結構心が不安定にさせられた。不器用というか、相手の心情を配慮できない会話が、苦手だ。

だが、映画撮影の打ち上げでイハちゃんという、まともなコミュニケーションができる人がやっと現れたことで、一気にとても見やすくなった。自分も主人公の青と同じく、ああいう流れの飲み会では端っこでウジウジしてしまうタチなので、彼女のような存在がまさに天使のように感じられる。彼女と、主人公の青が繰り広げる深夜のトーク、距離感、ちょっとしたスリルがとても良かった。

また同じ夜に並行で繰り広げられる成田凌と元カノの別れ話が、急激に物語のグルーヴを生み出し、そこから朝の街角の大団円シーンまで、ハラハラしつつ爆笑してしまう最高の流れを楽しんだ。

なるほどこういう映画なのかとわかってしまうと、心不安になった前半の古着屋でのTシャツ選びのシーンとか、古本屋でのやりとりとか、バーのマスターや常連の感じとかも、思い出が上書かれるように、懐かしい良いシーンに更新されていく、不思議な感覚。

いろいろなシーンを思い出しながら、この映画を見た人と語り合って弄り倒したくなる。

あんまり関係ないけど、あの映画制作の大学生たちのように、なにかと理由をつけてはみんなで飲みに行ける時代が、コロナを経た我々にはもはや帰れない過去となり、懐かしくも寂しい気持ちになった。

本作がこれだけ高評価なのも納得はするが、好みも分かれるだろうなとも思う。きっとこういう映画が好きな人ばっかりが劇場に行ってるんだろうな今は。結構かったるく感じる長いシーンも多く、130分という時間は必要なかったような気もした。
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