半兵衛

戦ふ兵隊の半兵衛のレビュー・感想・評価

戦ふ兵隊(1939年製作の映画)
3.5
中国での戦線をジャーナリスティックに暴くのではなく、活躍する日本軍人の裏にある被害者や疲弊した兵士の顔を強調してやるせない感情を観客から引き出し厭戦の気分にさせるソビエトで映画教育を受けた亀井文夫監督による巧みなモンタージュ演出は凄いと思うけれどこれをやるために多数のやらせをやっていたことがちょっと引っ掛かってしまう。特に無理矢理中国人の子供を引っ張り出して「そこで泣け」と演出しているのはエピソードを知るとムッとするけどそれはコンプライアンスに浸った現代の日本人だからそういう反応になるのであって一時代前の日本人にとって戦争で被害を受けた場所で子供が泣いている場面は繁栄の虚飾を剥がされたようなショッキングさがあったんだろうな。

やらせの戦争場面を事件が起きて急いでカメラを回しているようなカメラワークで本当の戦闘を撮っているような感覚にさせる演出は今も古びていないけれど、これが現代のテレビ番組に受け継がれていると思うと複雑な気分に。
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