半兵衛

マドリード美女連続殺人の半兵衛のレビュー・感想・評価

マドリード美女連続殺人(1973年製作の映画)
3.8
偶然から人を殺してしまったホテルを経営する中年姉妹が気に入らない宿泊している女性を殺害していくドラマ、とにかく姉妹の歳をとり体のあちこちが衰えてしまったことをこれでもかと言うくらい丁寧に描いているのでそんな彼女たちのどん詰まりな精神がこれでもかというくらい伝わり若さを謳歌する美女たちを次々と殺していく展開が重すぎてしんどくなってくる。

人を殺すことは神の意思を代行していると勝手に思い込んでいる姉が常に怒っているような顔立ちも相まって凄く怖い、そんな彼女が殺人するたびにどんどん発言がクレイジーになってくるのが更に怖い。そんな姉に抑圧され、言うがままに殺人に協力していく妹が凄く哀れ(でもちゃっかり彼氏はいたりする)。それにしても裸を晒していたくらいで殺された一人目も悲しいけれど、「そんな大したことのない理由で?」と突っ込みたくなるくらいの些細なことで殺される三人目が悲惨すぎる…それくらい姉妹がイカれているのだけれど。

ホテルで姉が消えたことを不審がる女性、そして次々と消える宿泊客、あることを切っ掛けに動き出す警察、どんどん壊れていく姉妹と色んな登場人物の流れを淀みなく展開していくストーリーや演出がよく出来ていた。そんな様々な視点が一つになっていく終盤に唸らされたし、ラストの終わらせ方も結末は見えているけどはっきりはしていないという絶妙なラインなのもいい塩梅。そしてラストカットの三人の表情がこれ以上ないくらい完璧。

殺人映画で一部のお客さんが期待するようなゴアな場面は前半は皆無なのが残念だけれど、後半の目玉の使い方と死体の出現はドキッとしてしまった。子供の頃に見ていたらトラウマになっていたかも。
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