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KCIA 南山の部長たちのhikarouchのレビュー・感想・評価

KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)
4.1
良い!まずルックがイケてて、良い韓国映画見てるなーって感じがビンビンする。パク大統領はじめとして、良い生地を使ったスーツがバッチリキマってるのもサスガ。お話としても、ずーっと重く低いトーンで溜めて溜めて溜めて、一気にカタルシス解放という構造で、単純に盛り上がれる。(別に楽しいお話ではないけど。)

韓国の近代史に疎いので、登場人物たちの背景が分からず見ていたけど、それでも問題なく楽しめた。そして鑑賞後に色々と調べてみて、韓国という国の辿ってきた歴史(というにはあまりに最近過ぎる出来事)の衝撃度の高さに震える。ここで暗殺される大統領はパク・クネ元大統領の父親ってのも知らなかったし、パク・クネが逮捕された汚職事件に繋がる因縁もすでにこの時期に発生しており、この事件の関係者が深く関わっていることなど。短期間に何度も軍事力による政変が起きているし、そこでおびただしい数の血が流れている。一般の日本人が考える戦後と韓国の人たちにとっての戦後とでは全く意味が違うんだなとあらためて思った。
ちなみにこの事件はクーデターとしては完全に失敗したので、韓国ではこの後も余裕で腐った軍事政権が続くのよね。そのあたりは「タクシー運転手」や「1987」で描かれている通り。

イ・ビョンホン演じた男が果たしてヒーローなのかは分からない。彼の真のモチベーションが本当に民主主義や国民のことを思ってのことなのか、私怨や個人的な野望に基づくものなのか、作り手側もどちらとも取れるような絶妙な描き方をしていた気がする。個人的にはこのスタンスも好み。

特に前半、人物名が覚えにくくて(韓国人は苗字バリエーション少なすぎてツラい。主要キャラにパクやキムがたくさんいる・・・)、誰の何が何?状態に陥ってしまったので、すぐさま倍速で2周目を見る必要があった。

終わり方の切れ味も良かった。「え、この最後に金を持ち出したアイツが"イアーゴ"なのか!?」と思ったけど、調べてみるとやはりアイツが次の軍事政権の大統領になっていた。ひえーって感じだよねもう。

そういう意味で、単体の映画としての面白さはもちろんのこと、韓国のどす黒い近代史の入り口としても面白い作品でした。
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