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スウィング・キッズのhikarouchのレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.4
これは評判以上の傑作ではないか!

序盤は、戦時下というシリアスな舞台設定ながら、ユーモア全開の軽いトーンで進んでいくので、これでいいのか?と思ってしまったが、後半から「んなわけねーだろ」とキツすぎる現実が姿を現す。そりゃそうだよなあ。

そんな中でも、音楽が、リズムが、ダンスがおれたちを解放してくれる、というのが映画から完璧に伝わってきてたまらない。理屈じゃねえ、踊りたいから踊るんだ!

戦争の愚かさ、イデオロギーの虚しさをこれでもかと描きながらも、それだけに留まらず、エンターテインメントの力強さ、素晴らしさまでアツく訴えかけてくる!

靴を使った数々の名演出。ともすれば地味になりそうなタップダンスシーンの迫力と楽しさ。もう今さら言うまでもないことだが、ここ数年の韓国の良作から漂ってくる画の品の良さ。
主人公がリズムに目覚めて、日常のあらゆる音がリズムに聴こえてくるところの表現とか、楽しくて良かったな。
David BowieのModern Loveの抗い難い快感よ。時代的にはめちゃくちゃなのに、最高のチョイス!

ラストのシークエンス。一度結末を見せてからの現代シーンで、ジャクソンがステージ上の傷を触る。あの時そこに確かにあったモノたちに思いを馳せる。そこから再びフラッシュバックして、あの日のふたりのダンスバトルへ。ここであらためて、このふたりのダンススキルの凄まじさ、有無を言わさぬダンスとリズムの魅力、彼らの熱い魂をこれでもかと見せつける。
あえてこれを結末の後に持ってくることで、観客もジャクソンと同じように、もう過ぎてしまった過去を、失われてしまった未来を、そこにしかない一瞬の今を目撃する。素晴らしいラスト。
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