蛙

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンの蛙のレビュー・感想・評価

4.5
やっと観れました。スコセッシの映画はやっぱり面白い。

ミクロに寄った身近な人物の出来事を描いて、マクロなテーマを浮かび上がらせていく。すごい完成度の高さで、長尺だけれど意味の無いシーンや演出は少しも感じず、緊張感を持った贅沢な鑑賞体験でした。

重層的で示唆に富んだ内容なので(しかも長い)観る人によって感じる事は多様且つ複合的だと思います。
私が感じたのは、スコセッシ作品でお馴染みの、流されるだけ流されながら自己欺瞞と保身しかない、ディカプリオ演じる主人公アーネストに多くの不快感や共感を感じる事はもちろん、加えて西洋と非西洋文化の対比が興味深かったです。

残忍で利己的、合理的な西洋文化に対して、性善説的、封建的な非西洋文化。当然今作ではっきり悪として描かれるのは西洋文化ですが、リリー・グラッドストーン演じるモリーを中心とした非西洋文化の、よく言えばおおらかな、悪く言えば愚鈍な、利点も欠点もしっかりと描かれていた事に好感を持ちました。

何が良い何が悪いでは無く、ドライにフラットに描かれる事で刺激される思考。深い余韻とはこう言う事なのかと再確認出来る、素晴らしい鑑賞体験でした。
蛙