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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のmerrydeerのレビュー・感想・評価

3.8
ルイーザ・メイ・オルコットによる1860年代終盤の自伝的小説「若草物語(Little Women)」が原作。
原作者自身がモデルである、ニューヨークで教師を勤める傍ら作家を目指すも中々自分の望む通りには進展しないジョー・マーチ(演:シアーシャ・ローナン)が母から故郷マサチューセッツに住む4姉妹の妹ベス(三女)の病気が悪化していることを知らせる手紙を受け取り、帰郷を決意する。
その道中、故郷での様々な想い出が蘇るのであった…。

と言う具合に、4姉妹の次女ジョーの帰郷、家族や大切な隣人一家との再会を起点に妹ベスの病状悪化を始め、異なった道を歩む4姉妹のそれぞれ抱える苦境、苦悩が描かれるシリアスな現在進行と、裕福ではなかったけど、かけがえのない煌めきに満ちた少女時代、そしてやがて訪れるその終わりまでも含めた回想エピソードが錯綜しながら物語は進展します。

1860年代終盤の原作ながら、無邪気な少女時代の終焉が迫る焦燥感・繊細な価値観の違いで成就しない恋愛事情・結婚にまつわる葛藤・固定観念で捉える女性としてではなく、個の人間としての幸福の追求、などなど今なお響く普遍的テーマの数々が敷き詰められています。
時代も国も異なれど一部のネガティブなテーマまでも共感できてしまうというのは、何とも切なくも思えてしまいますが…。

そうした普遍性を持った作品を鮮やかな色彩の映像とそこにそっと優美に花を添える音楽、十人十色だけど等しく愛くるしい主要人物の人間味を見事に表現するキャスト等が一丸となって2019年に映画作品としてリボーンしたことにより、様々な悩みや葛藤と付き合いながらも、失望に留まらず前を向こうとする凛々しさ、素晴らしさを伝えてくれたことを現代に生きる当方(原作未読)は幸せに感じます。
鑑賞後に残る心地良い余韻は静かに宿る希望の灯のよう。

後、個人的にはやはり、感情の機微レベルまで表現するシアーシャ・ローナンとそこを的確に引き出し抑えるグレタ・ガーウィグ監督のキラータッグによる胸の締め付け度合いもLadyBirdに引き続き強烈に印象に残りました。
哀しみを押し殺しながら何とか笑顔を作る狂おしい表情とか振る舞いとかのあの感じは名演というか素の感情表現にすら見えてしまう凄絶さ。
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