merrydeer

CURE キュアのmerrydeerのレビュー・感想・評価

CURE キュア(1997年製作の映画)
3.5
恐ろしい映画だ。

人間の深層心理に潜む心の闇に揺さぶりをかける刺激的な展開でありながら、流れる空気感が常にどこか淡白で、支離滅裂ではないのに焦点が合っていない様な不穏さが付き纏う。
視覚的なり、世界観なり、脚本なりが悍ましい作品は他にもいくらでもあるだろうが、真性のサイコ感をここまで恐ろしく体現し、サスペンスとしても成立させているという面で、自分にとっては類稀な恐怖体験を味わえる作品。

余りにも空しいラストシークエンスで心に大きな穴を開けられ、それまで詰め込んできた本作に対する様々な感情がエンドロールと共にダラダラと流れ出し、鑑賞後、心を侵すのは虚無感。或いは解放感か…。
恐怖心すら敵わず放出させられる恐怖。

黒沢清監督の研ぎ澄まされた作品の鋭利さが残酷なまでに突き刺さってくる。
merrydeer

merrydeer