merrydeer

パターソンのmerrydeerのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
3.9
アメリカのパターソン市で妻(と犬)と暮らすバス運転手パターソン(本名とのこと)の一週間が経過していく様子が淡々と流れ続ける。
月曜日の朝の起床から始まり、翌週月曜日の朝の起床で終わる。
平日は、朝の起床から始まり、仕事に出て、妻と夕食を共にし、夜は犬の散歩がてら、行き着けのバーに辿り着き、ビールをひっかけてマスターと談笑し、一日が終わる。
しかし、ルーチンの様に同じイベントを繰り返す毎日であっても、日々、予期せぬ人と出会ったり、想像してなかった出来ごと(それは自分にとって良からぬことも含めて)に直面したり、と全く同じ一日など絶対に存在せず、大なり小なり姿形を変えながら、積み重なり自分自身を形成していく。
そんな諸行無常観を、何ともポエティックな空気感を存分に纏い(ポエトリーは本作における重要なファクター)、美しく描き出している。

ストーリーを追う、派手な演出や音響に引き込まれる、と言う類の作品とは対極に位置しそうな、平たく言えば地味な作品なのだけど、終盤のシークエンスが象徴的なように、その中に一節でも受け手に突き刺さるものがあれば良い、と言う矜持をも感じる、実は力強い作品なのかも。
少なくとも自分などは、少なからず変化する己の日常の尊さにも想いを馳せてしまう程に、心に深く刻まれる作品としての鋭さを覚えてしまいました。

唐突に現れて、めちゃくちゃ美味しい所をもっていく永瀬正敏にも驚きです。

ネダバレ注意ですが、バックアップってやっぱり大切。
merrydeer

merrydeer