merrydeer

シング・ストリート 未来へのうたのmerrydeerのレビュー・感想・評価

3.6
1985年ダブリン、経済状況も夫婦間も危うい家庭、その都合で転校させられたカトリック修道会が運営する荒れた学校には校則に厳格な校長や気性が荒いいじめっ子。
主人公コナーを取り巻く環境はいきなりハード。
しかし、学校のすぐ側でいつも佇むモデルのラフィーナに一目惚れし、彼女を振り向かすために「俺のバンドのMVに出てくれ」と口から出まかせで、急ごしらえでバンドを組むと、彼のつまらない日常は大きく動き始める。
ロック愛好家の兄の指南も受けながら、Duran DuranやThe Cureに魅せられ、めでたく集まった有能メンバーと曲作りに励み、恐らく天性もあったのであろうソングライティングと歌声にラフィーナも心動かされ、MV撮影を通して彼女との信頼関係も構築されていく。

シビアな環境だけど、美しい煌めきに満ちた日々、それでも訪れてしまう好きな女の子や家族との辛いエピソード。
シリアスな展開への苦心、その先に待つバンドが目指すギグの場、そして物語の果ては…。

青くて、眩しくて、心穏やかでいられない。
MV撮影後の電車の中で少しだけ離れた席からラフィーナの笑顔をコナーが静かに眺めるシーンなど、何度観てももう狂おしい愛らしさ。
何と出来過ぎた青春だろうか。
出来過ぎてて、鬱屈した私のストライクど真ん中からは若干ズレるのだが…とか言いたくない人生だった。
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