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インゲボルグ・ホルムのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

インゲボルグ・ホルム(1913年製作の映画)
3.0
[「イントレランス」の原点、社会制度の壁に潰された不幸な母親の受難] 60点

やっと追加されたぜ。シェストレム最初期の作品であり辛辣な社会批判ものだが、内容・技法ともに当時としては挑戦的だったのだろうけど、現代の我々から見れば平坦な感じは否めない。結末も完全にセンチに流れており、同情は誘うがそれ以上ではない。

心臓の弱いスヴェン・ホルムは生活雑貨屋を始めるが心臓発作で倒れてそのまま亡くなり、店は妻のインゲボルイが継ぐ。しかし、いくら働いても借金は膨らむ一方で、ついに胃潰瘍になって働けなくなったインゲボルイは破産する。そこで役所から提示された案は子供三人を養子に出す代わりに住まい(教護院)とお金(月20クローネ)を提供するというもの。子供たちを乞食にしたくなかった彼女はそれを承諾する。娘のヴァルボリが病気になり手術が必要になるが、役所は里親に援助は出さない。業を煮やしたインゲボルイは教護院を抜け出して彼女に会いに行く。娘に会うことは出来たが、そのまま教護院に送り返される。養子に出された末っ子が里親とともに会いに来るが、最早インゲボルイを覚えていない。これによって彼女は発狂する。15年後、息子のエリクがインゲボルイに会いに戻ってくる。彼と再会したインゲボルイは正気を取り戻し、息子を抱擁する。

当時の環境を考えるとスウェーデンの若造が作った作品をきちんと輸出しているとも思えないのでグリフィスがシェストレム作品と認識していたかは確かではないが、「イントレランス」の原点「母と法」の形成に一役買ったと言われている。見ていなくても不思議はないし、見ていたら彼の関心に引っかかりそうなのは確か。

というか、発狂した人が正気に戻るのってそんな簡単なんかね。
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