パヴェウ・パヴリコフスキ監督作品…《イーダ》がとても好みだったので2作目です
作品の始まりと共に《イーダ》の映像を思い出します…静謐で格調の高さを感じさせる美しいモノクロ…余白の多い映像はバックにうっすら暈しが入り、フォーカスされた被写体が浮き上がる立体画のよう…
ウカシュ・ジャル撮影監督…インプットです
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冒頭バグパイプのような楽器と歌の掛け合い…老女が足踏みポンプで空気を送り込みアコーディオンを演奏…ポーランドの民族楽器や音楽が披露されます
主人公のひとりヴィクトルはそれらの音楽を調査するピアニスト…そして政府の責任者と共に国策としてマズレク舞踏団を結成することに…
歌や舞踏に長けた若者を発掘するためのオーディションで彼はひとりの少女ズーラと出逢い…瞬く間に恋に落ちます
小悪魔的で大胆なズーラ(ヨアンナ・クーリク)がとても魅力的…少女のような幼さもあり、フランス語でジャズを歌うシーンではウットリするほど妖艶
また、個人的には…ジャンヌ・バリバールの出演が嬉しかったです
1949年当時…ソ連の支配下にあったポーランドでは、スターリンの旗の前で讃歌を歌わせられることも…
また、ヴィクトルは西側の音楽とされるジャズに興味を持ち、政府から目を付けられます
ヴィクトルとズーラはふたりでパリ(西側)へ亡命しようと決めますが…約束の場所にズーラは姿を現しませんでした
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時代の波に翻弄される男女…東と西に引き裂かれても尚、会う場所を変えながら、磁石のように求め合います…逃れられない政治の圧力を背景に15年もの歳月をかけたドラマティックなラブストーリー
そして今作の魅力は全編を彩る音楽の美しさ
ポーランドの抑圧された空気感と対照的なパリの開放的でエネルギッシュなシーン…ポーランド民謡とジャズの対比も絶妙で音楽で社会背景が窺えます
常に他国に蹂躙され続けていたポーランドという国
劇中何度もバージョンを変えて歌われるポーランド民謡《2つの心》…添い遂げられない恋人たちの想いが籠った名曲に魂を揺さぶられます…
愛する人と共にいる…それさえも困難な時代
ふたりが幸せでいられるのは…
《向こう側》しかなかったのでしょうか…?
エンドロールはフィル友様より教えて頂いたグレン・グールド🎹 …バッハのピアノのスコアがしっとり聴かせます…♪ フレームアウトする映像も余韻を残します…