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ヘレディタリー/継承のmerrydeerのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.5
冒頭に据えられたミニチュア模型作家アニー(演:トニ・コレット)の母の葬儀後から、彼女の家族の身の回りで巻き起こる不穏(というか狂気的)な出来事を描く正しくホラーな一作。

たまたま最近観賞した同じくトニ・コレットが出演しているリトル・ミス・サンシャインは一つのイベントを軸に家族が結束していく様を描いていたように思うが、コレは一見するとその真逆で家族間の軋轢、崩壊が痛々しさや不快感を存分に纏いながら描写されている印象。

不可思議な恐怖体験に翻弄され、精神に異常を来してしまう様は観ているこちらの気分も見事にちぢみ上がらせてくれますが、やはり物語の中心人物として一際見せ場の多いトニ・コレットのヒステリック演技から顔芸にいたるまでの壮絶な迫力はコレぞ女優魂という感じで圧倒されます。

そして、デカい音、醜悪な造形の怪物等アトラクション的な恐怖描写ばかりに逃げるのでなく、ノイズの様に耳障りな音響、意味深なカット割りやあちこちに散らばった伏線的な小道具も含め恐ろしくも見入ってしまう映像、様々な要素が織りなす悪夢の様な居心地の悪い空気感とそれでも訪れる没入感は良質なホラー作品のそれと言ったところ。

凄惨な内容でただ気分が落ち込むだけでなく、観賞者をしっかり怖がらせようという気概に満ちているし、意味深なだけで意味をなしてない気がする間延びした退屈なシーンが少ないのも良いですね。笑

呆気に取られて解説記事を探さずにはいられなくなる事請け合いの終盤に至るまで、入念に作り込まれた力作故に放たれるベッタリと張り付く様ないかにも縁起悪そうな負のパワーが蠢いております。
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