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THE BATMAN-ザ・バットマンーのmerrydeerのレビュー・感想・評価

3.2
いつになく哀愁と危うい雰囲気が漂うブルース・ウェイン、ヴィランのリドラーの悪趣味な手口とそれに付随するサスペンス、ミステリー要素、デヴィッド・フィンチャーの名作セブンよろしく雨や夜の描写が多めで晴れ晴れとしない陰鬱なシチュエーションとして描かれるゴッサムシティ、そして劇中歌にはNirvanaまで流れ出す、という小生の90年代グランジ愛をフルスロットルで殴打する要素マシマシな素敵な作品!
…ではあるものの、大変良くない感想だとは自覚しつつ、真性のサイコ感で真摯に勧善懲悪というテーマに揺さぶりをかけてきたダークナイトの影がどうしても呪いの様にフラッシュバックしては比較してしまう。

狂気と美学を織り交ぜたスコセッシ作品テイストをベースに、多くの人がよく知るヴィランを通して腐敗した街で虐げられる人々の(誰もが抱きうる)闇と狂気を浮き彫りにしたトッド・フィリップス版ジョーカーはホアキンフェニックスの名演も相まって、ダークナイト・トリロジーとはまた違う、良くも悪くも強烈な作品として受け止められましたが、本作はインパクトと言う点で、触れ込みで高まり過ぎたハードルを悠々と超えるほどの名作感を個人的には感じ取ることはなかった気がします。(所々冗長さも正直感じた)

とは言え、冒頭に書いた様に魅力的な要素も溢れていて、特にクセの強いキャラクターの数々はぜひとも今後の展望に触れたくなります。
中でもリッチなのに世捨て人感に満ちた精神的危うさが露骨なブルース・ウェイン及びバットマンはロバート・パティンソンのヴィジュアルも相まって、モチーフになっているというカート・コバーンももちろんですが、往年のトレント・レズナー味も感じて愛着を覚えずにはいられません。
そして、ジョーカーよりもノンフィクション感のあるポール・ダノのガチサイコ演技も壮絶です。
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