課長とヒロシ

劔岳 点の記の課長とヒロシのレビュー・感想・評価

劔岳 点の記(2008年製作の映画)
4.4
課長(以下課):、、、と言うわけで『劒岳』だな。

ヒロシ(以下ヒ):前回レビューしました日本映画史上最高のカメラマンの1人ともいえる木村大作氏の監督デビュー作にして、日本アカデミー賞最優秀監督賞受賞など、高い評価を受けました

課:山岳シーンの撮影に関しては、「これは撮影でなく行である」をモットーに、CGを使わず、あくまで「実写」に拘ったというキョーレツな映像美は、正に本物の輝きと言った感じで圧巻だよな。キャストも日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞した日本一「背負子(しょいこ)」の似合う俳優、香川照之氏を始め、ほんのチョイ役まで豪華だ

ヒ:香川さんは本作と『龍馬伝』で完全に背負子のイメージが付きましたよね(笑)生涯で一本しか監督しないと常々言っていた木村さんの作品ですから、皆さん是非とも出たいと集まってきたみたいですねー

課:まあ、その後本作が評判良かったからか、二作目『春を背負って』を制作しちゃうんだけどな

ヒ:笑笑 『春を〜』はイマイチの評価ですが、本作には原作(新田次郎さん)があるくらいの違いで、演出的にはあまり変わらない感じですけどねー

課:和食の達人の素材を最大限に活かした味付けみたいに、良い物語と、良い役者が揃っていれば、演出を最低限にする方が良いのかもな!、、、と言うわけで希代のカメラマン、木村大作氏の最初にして最高の傑作を、驚異的な映像と共に堪能してくれ!

ストーリー 4
キャラクター5
世界観   4
演出・映像 5
音楽    4
それってどうやって撮ったんすか!?度99









以下ネタバレありのフリートークです、、、




課:本作では劒岳の初登頂を巡って、主人公柴崎芳太郎(浅野忠信)の所属する、日本陸軍の陸地測量部隊と、小島烏水(中村トオル)の日本山岳会が鎬を削るところが見どころだが、あくまで「山に登る」ことを目的とする日本山岳会に対して、「地図を作るための測量点を建てるために山に登る」測量部隊の違いがよく表現されてたよな

ヒ:地図を作るという目的が、陸軍のメンツにより初登頂という目標にすり替わる中で、あくまで自分の「測量」という仕事を全うしようとする柴崎芳太郎さんの矜持が良かったですよね

課:記録にこだわるアスリートとしての矜持が日本山岳会なら、目標達成にこだわる仕事人としての矜持が測量部隊って感じだよな。で、この仕事人としての矜持は木村大作氏のものでもあるんじゃないかとも思うんだ

ヒ:なるほど!自分が脚光を浴びるのではなく、カメラマンとして監督を支え続けた木村さんだからこそ、静かですが決して揺るぎない「仕事人としての矜持」を語る資格がありますよね

課:劇中で役所広司氏が語る、「何をしたかではなく、何のためにしたかだ」っていうのは、そんな仕事人としての矜持を持ちながら、仲間達とひとつの目標に向かって努力し続けた本作の撮影のことを言ってるんじゃないかとも思うんだよな。静かで淡々とした演出なのに、心に熱いものを感じるのは、俺らみたいなサラリーマンでも経験する「自分の仕事を全うしようとする男」と、「それを支える女」を観ることができるからなんじゃないかと思うぞ

ヒ:そう考えると、作品だけじゃなく、それを制作した全ての仕事人も含めての「劒岳」なのかもしれませんねー。さて!明日も「何かのため」に仕事しますかー!(笑笑)
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