菩薩

ある夏の記録の菩薩のレビュー・感想・評価

ある夏の記録(1961年製作の映画)
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シネマ・ヴェリテの金字塔と呼ばれる本作のカメラが暴き出した最も真実らしい事実がなにかと言えば「幸福」の対義語が「不幸」では無く「労働」であると言う事実に他ならないと思うが、そもそも不定形である「幸福」そのものをカメラに収めようとするその姿勢が行き着くところの「愛の映画を撮ろうとしたら無関心の映画になってしまった」と言うのは何よりの真実でありこの作品が獲得した「前進」であると思った。いかんせんシネマ・ヴェリテと呼ばれるものを意図して観たのが初めて(たぶん)なもので、ずっと「これがシネマ・ヴェリテかぁ…」なんて謎の感慨に耽っていたが、カメラの前での「嘘」vs「真実」の相克に物心が付いたのはここからって事なのですか?ってのを質問すりゃ良かったと今更後悔している。カメラの前で素顔を晒さなければそれは真実にはなり得ないし、晒し過ぎても嘘臭さが漂う、その辺りを出演者自ら顧みるフィードバックが非常に興味深かった。印象的なのはやはり庭の木相手に挑む柔道の自主練…では無くマルセリーヌの腕に刻まれた収容者番号、を見て思わず声を失うアフリカの青年。今丁度圧倒的な悲劇を前にした人が失語症に陥る事についての本を読んでいるので興味深い瞬間だったし、それこそトークゲストの小森はるかが作品を通して成し遂げようとしているのはそれを他者の言葉で語り直す事なのではないかと勝手に繋げてしまった。その後の明らかな「演技」(そもそも彼女は女優なのか)は真実がどうであるかを超越する感動がある。まぁ結局のところよく分かって無いけど、こう言う企画が満席になるのってなんかめちゃくちゃいいなぁ…と思いました。サントロペ編で出てくるBBみたいなキャンギャルみたいなお姉さん、あのお乳は一体なんだ…真実とは一体…。
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