わこ

この世界の片隅にのわこのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.6
戦争を描いているのではなく、描いているのはあくまですずという一人の女性の人生。
一人の女性が、幼子から少女へ、少女から大人へと成長する。
その生きた時代が、ただ昭和の戦争の時代で、その生きた場所が、ただ日本の広島や呉の片隅であった。

本当にすずさんの笑顔が可愛い。周りの人たちは、きっと本人が思ってる以上にあの笑顔に癒されていたんだと思う。現代でもあんな風に笑える人は貴重だ。

もし自分がその時代に生きていたらすずさんみたいに柔らかい笑みを浮かべることができただろうか。呉の人たちみたいに、前向きに明るく生きていけただろうか。
戦争が日常に溶け込んでいた時代で人々は『普通に』生きていた。みんなにとっては、ただ生きているだけで『良かった』。好きな人と一緒にいて、家族がみんな笑って過ごせればいい。ただ、戦争が無ければ味わうことのなかった、やりきれなくなる悲しみや、苦しみや、悔しさは止めどなく襲いかかってくる。それでも、悲観的になったところで、目の前の現実が思い通りに消えてなくなることはない。複雑な心の葛藤に、何とも言葉が出なかった。

この世界の片隅で、私たちは生きている。
どんなに小さなことでも、その人自身の感じるささやかな幸せが、ふと浮かべた微笑みが、生きる力を強くしていく。
何よりものんさんの演技に、心からのありがとうという言葉を贈りたいです。
わこ

わこ