名倉

この世界の片隅にの名倉のレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
3.8

前半を敢えて平和でゆるいテンポにする事で後半の展開が、そのギャップで途轍もなく恐ろしいものに感じます。



戦争映画にしては、絵のテイストもテンポも非常に観やすく、子ども向きな作品ではあるのですが、それと同時に、原爆というものがその日常を、どの位の規模で、どの位の勢いで壊していったのかと言うのを、痛々しいほど教えてくれます。



絵を描くのが得意だったすずの個性を、空襲が起きてから見せる演出が容赦無く残酷で、すずの心情と織り交ぜながら殴り書きの様に描くシーンが見ていて非常に辛いです。絵を描くための右手を失い、まるで左手で描いた様な荒さで、晴美との思い出が映し出される展開は、あまりに悲し過ぎてトラウマの様に印象に残っています。



主人公すずを演じたのんさんの演技は素晴らしく、マイペースで朗らかな性格の特徴が2人に共通している様でとても良いキャスティングだったと思います。



エンディング自体は、救いのある終わり方をしてくれるので安心して見終われました。ただそれも、胸を締め付ける様な展開なので涙無しでは観れません。



蛍の墓に次ぐ名作戦争映画だと思いました。
名倉

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