名倉

セント・オブ・ウーマン/夢の香りの名倉のレビュー・感想・評価

4.2

アルパチーノの盲目の演技が凄まじい…



彼は役作りのために視覚障害者のための学校に通い、内面外面ともにスレード中佐を演じています。今作で唯一アルパチーノはアカデミー主演男優賞を受賞。スカフェやゴッドファーザーでも受賞出来なかったアルパチーノが悲願の受賞を手にした今作は、本人にとっても忘れ難い作品になったそうです。



パッケージを見てシリアスなラブロマンスな話なのかと勝手に予想していたのですが、微塵もそんな要素はありません。人生に悲観してふて腐れた孤独な盲目の退役軍人アルパチーノが人生の選択に迫られている心優しい青年チャーリーとの数日間の交流を通じて人生を見つめ直し、新たな希望を見出す心温まるヒューマンドラマです。



今作で有名なタンゴを踊るシーンは、アルゼンチンの名曲「ポル・ウナ・カベーサ」を背景にパチーノとガブリエル・アンウォーが練習に2週間と撮影に3日を費やしたそうです。曲名は和訳で「首の差」。わずかの差で負けた競馬の競走馬に例えて、恋の駆け引きに敗れた男の心境を語った曲だそうです。今作にピッタリの選曲だと思います。



アルパチーノの演技は勿論ですが、クリス・オドネルが演じたチャーリー役もまた素晴らしかったです。実はチャーリー役にはレオナルド・ディカプリオもオーディションを受けていたそうです。レオ様バージョンのチャーリーも見てみたい気もしますが、今作のクリス・オドネルは純粋で初々しい演技がハマり役で、チャーリー役は彼にしか出せない味があったと思います。



「If you’re tangled up, just tango on.
足が絡まっても踊り続ければいい」



人生の教訓にしたいくらい胸に響く台詞です。



最後のフランクの演説も一生胸に刻んでおきたい名シーンです。



「チャーリーの沈黙の正誤はわからない。だが決して自分の徳の為に友を売るような人間ではない、それが人間が持つ高潔さだ。それが勇気だ。指導者が持つべき資質はそれだ。チャーリーも岐路に直面した。そして彼は正しい道を選んだ。真の人間を形成する信念の道を。それは困難な道だ。しかし、さあ。彼の旅を続けさせてあげよう。」



泣ける!!2人の友情に「フーアー!!!」
名倉

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