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ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズのMrFahrenheitのレビュー・感想・評価

4.6
年始に石岡瑛子展を訪れた際に会場で流れており、気になっていた映画。ようやく鑑賞。ポール・シュレイダー監督のフィルターを通じて三島の思想と精神を映像化するとこうなるのかと、とても面白かった。遥子夫人の反対で日本未公開。

幼少期〜市ヶ谷までの三島を映しながら、彼の精神世界を表すように「金閣寺」「鏡子の家」「奔馬」の映像が挿入されるのだが、この構成が素晴らしい。サブタイトルにある”4 Chapters”のうち3つは三島の小説パートだが、4つ目は市ヶ谷での三島を映し、オープニングに繋がる円環となる。

三島の原作を読んだことのある人向けだとは思うが、三島の作品と語られがちな最期を映像化したというより、ポール・シュレイダーが解釈し構成した、監督による創作物として芸術性が高く、作り手の自己満足に終わらない説得力と見応えがあった。

小説を映像化した部分の詩的表現、石岡瑛子による美術表現が世界観に無理なく調和しており素晴らしい。三島が取り憑かれた世界にこちらも引き摺り込まれそうになった。

一度聴くと耳から離れないフィリップ・グラスによる抒情的な音楽も素晴らしい。(トゥルーマン・ショーのラストで同曲が使われていた)

所々鳥肌が立つほど引き込まれた贅沢な2時間で見てよかった。鏡子の家で横尾忠則みたいな人いるなーと思ったら本人だった。