緩い映画という触れ込みで見始めたけど、映像の端々にきちんと映画らしい色気みたいなものを伴った作品。映画としてのルックも余りチープという言葉では形容したくない。確かに手作り感は漂っているけど、衣装やセット、ロケーションなど隅々まできちんと造形されていると思うし。何よりカメラに切り取られた光景が、どの場面を取ってもきちんと異景の印象を与えることに成功していて、映画としてちゃんとかっこいいと思うんですよね。撮影がいい。
確かにぷっと笑っちゃうようなすっとぼけた感覚が映画全体を支配していて脱力系と呼べなくもないんだろうけど、印象としてはむしろフェリーニの映画を見たときの「何でこんなもの思いつくんだ」という光景や状況を目にしたときのショックに近くて、それは緩いとか脱力系というのとはちょっと違うなと。完全な異文化に放り込まれて右往左往するナンセンスな筋書きはちょっと銀河ヒッチハイクガイドを連想する部分もあり……場面場面によっていろいろな感情や想像力を刺激される。あとやっぱり異世界を構築する美術が見てて楽しいですよね。意外と金かかってそうな気もしたり……
様々な要素が混沌と渦巻きながら、2時間12分というちょっとだけ長い尺をゆったりとユーモラスに、抒情みたいなものも漂わせながら、全体としては気張らず見られる娯楽として構成してあるのが良いですね。
それと異星人の描写。かつてこんな人間くさい異星人が描かれたことがあっただろうか……