ガンビー教授

フランケンシュタインのガンビー教授のレビュー・感想・評価

フランケンシュタイン(1931年製作の映画)
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めちゃくちゃ良かった。(ネタバレチェックは入れていないが、古典なので以下ネタバレ全開で)まずいかにも見世物小屋のようなインチキ臭い脅しから映画が始まるのが良い。異常な執念に憑りつかれた天才科学者フランケンシュタインと卑しい助手という組み合わせ。彼らのいかにも真っ当ではない怪しい活動、それを案じる婚約者とフランケンシュタインの友人。ぱっと場面が飛ぶと嵐の中の尖塔というロケーションに移る古典映画らしい思い切りの良い編集。表現主義からもろ影響を受けていそうな尖塔内部の歪んだセットはわくわくする。死体の継ぎ接ぎに命を吹き込まんとする場面の異常な高揚感。また映画後半で怪物が手に負えなくなってくるあたり、画面の奥の半開きになった扉の向こうでついさっきまで鞭で怪物を虐めていた助手が首をくくられ死体となっている姿が小さく垣間見えるというそっけないが故に恐ろしい表現に「!」と新鮮な驚きを受ける。いよいよ少女が亡くなる有名な場面にさしかかると、林の中をさまよう逃げ出した怪物の姿を追う手持ち?っぽいカメラワークの挿入が不安な緊張感を作る。フランケンシュタイン博士の婚姻で街に流れる祝祭の空気、それとの対比で起こる惨事、怪物と少女という今やシンボリックな取り合わせ、つかの間流れるのどかな時間から急転直下、水面へ放られる少女の体というあっけない運動の無造作さ。祝祭の空気のなか魂の抜けたような顔で少女の死体を抱えて歩いていく父親(周囲の空気も一変していく)を捉えた映像の怖さ。一気に怒りを爆発させた人々が篝火を手に怪物退治に向かうという増幅され先鋭化されたリアクションから感じる居心地の悪さ、その「一般市民」の姿の普遍性。ついに怪物はひとつの風車に追い詰められそこに火が放たれるが、最後の最後、焼け落ちる風車をぱっと引いた位置から捉えるロングショットにダメ押しで殴られ、ここで映画が終わってほしい!と思うぐらい素晴らしかった(そうはならなかったけど)。ともかく、古典映画は良い。あと、なんか手垢のついたことを言うようでバツの悪さを感じるが、これが71分の中で語られるということにも心底感心する。

ちなみにアマゾンプライムで見たんだけど、配信でこういう映画が見られる時代というのもそれはそれで良いもんすね。
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