義清

セデック・バレ 第二部 虹の橋の義清のレビュー・感想・評価

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モーナルダオ、すごいかっこよかった。大地をがっちりとつかんでいるかのような逞しい脚、大きな肩、吠える犬をも黙らせる強靭な声、そして、なによりも、あの眼差し。あんなおじさんになりたいものだ。あれで本作が初めての映画出演だというのだから驚いた。
冒頭の狩や抗争のシーンの素早い展開は、どーやって撮ったんだろ。若き日のモーナルダオが急流に飛び込み、水中で岩に刀を突き立てて体勢を支える姿がやけに印象深い。弓矢は恐ろしいくらいに強弓だし、岩肌や茂みを走るのは四つ足の動物のように素早い。まるでもののけ姫のよう。こういうのを撮ってみたいんだ。例えばアイヌの映画などどうだろうか。地の利を活かし、大地を味方につけながら、西洋にかぶれた日本兵に勇猛に戦いを挑む姿は、本当に美しかった。
『レイルウェイ 運命の旅路』でもそうだったが、ここでも日本兵は醜い。何とかならないものか。
戦いにイデオロギーは不可欠だ。人を強くする。
冒頭の下関条約調印の描写では、あえて卓を囲んで署名することはせずに、港の軍艦を背景に、文書の押印部分だけを映していた。実際の外交官が現れるのは、李鴻章が船を降りるときだけ。この描き方はいい。
なぜか、忍者の映画のあるシーンを思い出した。題名はわからない。ある忍者が単身で聚楽第に忍び込み、秀吉の部屋まであと一歩というところで、鶯張りの廊下を踏んだがために警護に囲まれる。その時、廊下の左右の襖が次々に開き、侍が出てくる。オマージュを捧げたいいいシーンだ。昔の映画って、やはりすごい。能のように、無駄がなく、緊張がある。
『セデックバレ』の名シーンは、下関条約調印のシーンはもちろん、もう一度みてから決めたい。
義清

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