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小説家を見つけたらのsoopenのレビュー・感想・評価

小説家を見つけたら(2000年製作の映画)
4.0
これぞ映画!無駄なストーリー、無駄なセリフを容赦なく削ぎ落として、あるべき姿へ誘う。静かな感動がどっと押し寄せ、思わず涙ぐむ、そんな素敵な映画でした。

ブロンクスのアパートの上階で、長年外に出ずに、窓から見える景色だけを眺めて生きてきた老作家、たった一作の後世に残る名作を書いて世間から雲隠れした、偏屈なお年寄りが、ひょんなことがきっかけで、ブロンクスの天才少年と出会う。少年は、自分の才能を持て余し、ノートに文章を書き綴る毎日。人知れず小説を読み漁り、膨大な知識が増えていくものの、友達はバスケで生計を立てようと奮闘する貧乏な若者ばかりで、話が通じる訳もなく…
そこで出会った老人との丁々発止なやり取りに、会話の楽しみを見出していく少年。受け入れてもらえないなら押しかけるまで、と足を運び、いつの間にか結ばれた師弟関係。秘密を約束し合う2人なれど、秘密を長続きさせるには、大きなリスクが伴う。少年の才能に気付く大人たちによって、起こるトラブル、嫉妬、それらが少年を危機に陥れる…

ショーンコネリーの偏屈な老人役は、ハマり役でした。何を演じても華があり、味のある役者だなと思います。また16歳の少年役のロブブラウン。彼は本当に16歳でニューヨークハーレム出身だったようで、すごく説得力のある演技でした。2人の軽妙な会話は、時に笑いをもたらし、会話の中で少年が成長していき、最後にはユーモア溢れるやり返しが見事であったし、歳をとってからも、孤独に麻痺することなく、人種や年齢性別に関係なく友達は出来る!という希望を持たせてくれる映画でもあります。
また、2000年当時のブロンクスと今は違うと思いたいですが、やはり人種差別の壁を乗り越える方法が、”特別な人間”だけではなくなる日を期待したいと思いました。
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