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PERFECT DAYSのsoopenのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.2
丁寧に日常を生きる。
日日是好日。今度は今度、今は今。今この時を楽しもう、先に何があろうとその時はその時。毎日小さくても幸せを見つけて生きていこう。

東京でトイレ清掃員として働く平山。それなりの年齢を重ねているが、スカイツリーのお膝元で質素な下町暮らしを楽しんでいる。
なぜこの仕事を選んだのかは明かされない。家族構成も父親と妹と姪がいる以外には分からない。
平山には体に馴染んだルーティンがある。隅から隅までトイレを清める、終わったら銭湯で丁寧に体を洗う、飲み屋で一杯、寝る前には必ずお気に入りの古本屋で買った本を読む。
休日には溜まった洗濯物をコインランドリーまで洗いに行き、向かいのスナックで常連達とママを囲み、常日頃の無口はどこへやらで、笑顔を見せて喋る。
そして読書。時間が来たら途中でも止めて寝る。

そんなささやかな平山の平穏な日常に、時々刺激を与える人物がいる。同僚のタカシ。タカシの女友達のアヤ、姪のニコ…
不器用な平山の優しさが若者達の心に届いているのかいないのか。
トイレに仕掛けられているゲーム。昼休憩のサンドイッチを食べる公園の木の下、降り注ぐ木漏れ日。毎晩見る墨絵のような夢。似通っているが全く同じではない、新しい発見のある毎日。優しさと美しさと儚さとちょっとした遊び心。

泣きたくなるような過去の後悔も、片思いの切なさも、初めて会った人を慰めようとして始めたたわいもない遊びも、全てが日常に溶けてゆく。

丁寧に、丁寧に生きよう。
一生懸命頑張らなくてもいい、一つ一つ丁寧に扱おう。古いものには愛着を。出会いは一期一会。後悔は出来るだけ少なく。日々を楽しもう。自然の美しさに目を向けよう。

そんな豊かな気持ちにさせてくれる映画に出会いました。
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