てつこてつ

甘い生活のてつこてつのレビュー・感想・評価

甘い生活(1959年製作の映画)
4.2
学生時代にとにかくハマったイタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニ監督の作品群。

数十年ぶりに彼の代表作の一つでもある「甘い生活」(La Dolce Vitaのイタリア原題をそのまま直訳したのは大正解!)を鑑賞。

上映時間は長いし、様々なエピソードが乱雑に並べられるので難解と評されがちだが、他のフェリーニ監督作品を既にご覧の方なら、一貫して母なる存在から娼婦にいたるまで、フェミニズムのような陳腐とまでは言わないがお堅い思想とは異なり、フェリーにの純粋に“女性”という存在に対する称賛が詰め込まれた作品であることは分かるはず。

この作品内で登場する女性キャラクターたちもご多分に漏れず誰もが魅力的。ポスターの代表ビジュアルでも登場するアニタ・エクバーグが実は冒頭の数シーンにしか登場しないのは意外だが、彼女の、まさに英語で言うところのglamorous(日本語のグラマラスとは明らかにニュアンスは異なる!)という言葉がピッタリな圧倒的な美貌とオーラ、そして真夜中のトレヴィの泉で水浴びを楽しむシーンは強烈な印象をやはり残す。アメリカ人のスター女優という役どころなのでイタリア訛りの入った彼女が話す英語の台詞も実に可愛らしい。

エンディングシーンに最も純粋な存在である全くの穢れを知らぬような少女を登場させる演出も素晴らしい。

随所で流れる、これぞフェリーニといった感のニーノ・ロータ作曲の明るい音楽もいい。

この作品の舞台となったベネト通りには憧れて、実際にイタリアを訪ねた際には、無理してこの通りに面した高級ホテル(ホテル・マジェスティック。帰国後に手書きのサンキューメッセージが国際郵便で丁寧に送られてきたのに感激)に宿泊した。実際にベネト通りから一本道を進んで行くとトレヴィの泉や、様々なローマの景勝地に歩いて回る事が出来、今なお、ローマで一番華やかな街並みである事が実感できた記憶が懐かしく蘇る。

この作品を鑑賞された方には、機会があればフェリー二監督の晩年の作品「インテルビスタ」(1987年)もご覧いただきたい。「甘い生活」撮影から30年近くの歳月が流れた後に、マルチェロ・マストロヤンニとアニタ・エクバーグが再会し、あのトレヴィの泉の名シーンが流れアニタ・エクバーグがリアルに涙を流すという美しい名シーンが登場する。
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