昨年7月、76歳にして逝去されたフランスを代表する歌手・女優、そしてファッションアイコンでもあったジェーン・バーキン。
彼女の晩年の姿を実の娘で女優でもあるシャルロット・ゲンズブールが追ったドキュメンタリー作品。
実の娘、また、自身と同じように女優の道を選んだ者同士ゆえ、カメラの前のジェーン・バーキンが実に自然体。
顔や首の皺、手の甲のシミを隠そうともせず、否、むしろそれが年齢を重ねた証としてカッコよく見えるのは、ジャンヌ・モロー同様にフランス女優ならではの特権なのか、はたまたジェーン・バーキンが纏うオーラのせいなのか・・。
日本、ニューヨーク、フランスの別荘、パリのかつてのパートナーでシャルロットの実父・セルジュと暮らした家などを舞台に交わされる母と娘のさりげない会話の一言一言に愛情が込められていて美しい。
私的な会話が中心となるので、映画の中のジェーンやシャルロットの近親者しか知らないであろう自分を含めた視聴者には「誰?」となるファーストネームが飛び交うが、中盤以降、ジェーン・バーキンが3人のパートナー(婚姻関係も含む)の間にそれぞれ一人ずつ3人の娘さんを授かっていた事が明確になる。
実の娘だからこそ聞けるストレートな質問の数々、また、それらに真摯に答えていく二人の姿に強い絆を感じる。
美しい海岸を歩きながら、亡くした長女・ケイトへの想いをジェーンが語るシーンで幕を閉じる本作。ジェーンの最初の夫である作曲家ジョン・バリーとの間に生まれた写真家ケイト・バリーの生い立ちについて、本作鑑賞後、早速調べたくなる衝動に駆られたのは自分だけではない筈。