何かすごく言葉にできない不思議な魅力。サスペンスかなと思ってたら、終わってみればオジさん2人と年下青年の同性愛の話だった。ジャック・オーディアール監督のデビュー作。

犯人に撃たれて植物人間になった刑事とその犯人を捜すセールスマン。ヒッチハイクで知り合った賭博師と頭が弱く子供のようにピュアな青年。この2組が繋がっていき（つながり方も見事）、想定外のラストを迎える。

詐欺師役のトランティニャンに懐いてしまう青年ジョニーを演じるマシュー・カソヴィッツのキャラが愛おしくて、まさに天使みたいだった。カソヴィッツは先日観た『憎しみ』で監督してたけど、俳優としてもいいではないですか。今作で新人男優賞を受賞も納得。ピュアな瞳が魅力的でした。オジさん２人も味わい深くて愛おしい。また見返したくなる作品だった。

原作では、ジョニーは戦場で受けた精神的ダメージから子供のようになってしまったんだそう。原作を読んでみたくなりました。（原作『真夜中の相棒』テリー・ホワイト）

• #オーディアール！

WOWOW録画鑑賞
【フランスの名匠ジャック・オディアール特集】

“俺が面倒を見る｡奴は俺のものだ…”

『パリ13区』（2021）に続き監督のデビュー作を鑑賞｡割と地味だが渋い好きな作品だった｡

鬼才ジャック・オディアールの監督デビュー作。賭博師とセールスマン、しがない２人の物語が交錯するネオノワール。
出演は名優ジャン＝ルイ・トランティニャン、マチュー・カソヴィッツなど。

原題『Regarde les hommes tomber 』
英題　『See How They Fall』

1994年仏作品101分
監督・脚本　ジャック・オディアール
製作　フランク・ル・ウィタ
原作　テリー・ホワイト『真夜中の相棒』（邦訳・文春文庫）
脚本　アラン・ル・アンリ
音楽　アレクサンドル・デスプラ
撮影　ジェラール・ステラン
出演　ジャン=ルイ・トランティニャン　マチュー・カソヴィッツ　ジャン・ヤンヌ
イヴォン・バック　

翻訳者　斎藤敦子

（WOWOW番組内容より）
中年セールスマン・シモン（ヤンヌ）は刑事ミッキー（バック）と友人同士だが、ミッキーは何者かに撃たれて植物状態になってしまう。シモンはミッキーを撃った犯人を捜す旅に出る。一方、賭博師マルクス（トランティニャン）は青年ジョニー（カソヴィッツ）と出会うが、ジョニーはマルクスになつくように。やがてマルクスは賭博に負け続けて大きな借金を背負い、そのせいで犯罪組織のボスから殺人を強要されるが、マルクスに代わってジョニーがそれを引き受け、彼の初仕事は成功するが……。

（WOWOW解説より）
脚本家として「バルジョーでいこう！」などを手掛け、後に「リード・マイ・リップス」「預言者」「君と歩く世界」「パリ13区」などを監督するジャック・オディアールが、本作で監督デビュー。
いずれもしがない賭博師とセールスマンという男性2人の物語が交錯していくうち、予想外の展開に発展していくネオノワール。
名作「男と女（1966）」などのベテラン俳優トランティニャン、後に「憎しみ」などで監督としても活躍するようになるカソヴィッツらの顔合わせが映画ファンにはお楽しみ。原作は米国のテリー・ホワイトの小説。

凝った構成と男たちの友情を越えた関係に独特の雰囲気を漂わすフイルム・ノワール作品｡

冴えないセールスマンのシモン｡
友人の刑事ミッキーが撃たれ植物人間に｡身寄りの無いミッキーを見舞い続けるシモンは犯人を探す旅に出るが仕事より優先して行くようになり…

こちらも冴えない老人の賭博師マルクス｡
そしてマルクスと知り合い懐くようになるジョニー｡無垢な性格のジョニーは金に困るマルクスに都度工面するも、マルクスは賭博で負けが続き大きな借金を抱え、裏社会のボスから殺人を強要されるが……｡

男性2人とも冴えない風貌｡
どちらも人生に疲れ希望もない日常｡
ジョニーの人の良さに甘えるマルクス｡
仕事も家庭も八方塞がりのシモン｡

そんな3人の物語が交錯していく｡

若い頃のジャン=ルイ・トランティニャンはカッコ良かったが、本作では枯れた初老の賭博師マルクス役はそのギャップに最初わからなかった｡

ジョニー役マチュー・カソヴィッツも、マルクスに無償の愛を捧ぐ役柄がはまっている｡

シモン役ジャン・ヤンヌも、冴えないセールスマンが友人を撃った犯人を探すため、仕事を投げ出してのめり込んでいく役柄を好演｡

主要登場人物は、ほぼこの3人｡



【印象的なシーン】ネタバレあり
・前半、踊るミッキーに踊ろうと勧められるが、
　”靴が減る“とにべも無いシモン｡
　が後半、
人生の目的を見出し、キャンピング・カーでおもちゃのピアノを弾きながら指が踊る

・噛みつき防止のカバーをつけた犬を見つめるシモン｡

・夫婦仲が冷え切っているシモン｡
原因は彼の内面にある｡
シモンの夢
　妻が他の男性と抱き合うベッドの横で妻と会話するシモン｡シュール！

・レストランでシモンと楽しそうに話すジョニーに嫉妬を覚えるマルクスの表情｡

・ジョニーのマルクスへの無償の愛｡
ジョニーは、あのフェリーニの『道』のジェルソミーナを想起させる｡

・終盤、シモンとマルクスの対峙｡
　このシーンが本作の1番の名シーン‼️

マルクスを撃ったシモンが近づく
“ジョニーは？”

”無事だ　俺が面倒を見る…
　やつは俺のものだ”

”俺は死にたく無い“

“分かるよ…
　これでお前も一巻の終わりだ
　　お前の役目は終わった…
　　　ジ・エンドだ”
（指をパチっと鳴らし）
　”幕！“ （息絶えるミッキー）


天使を巡って、“しがない“中年男性たちの運命が動き出すクライム作品｡
オディアール監督作品をもっと観てみたい｡



【忘備録】ネタバレなし
（キャスト）
・マルクス Marx
- ジャン=ルイ・トランティニャン

・ジョニー（フレデリック） 　Johny
- マチュー・カソヴィッツ

・シモン　Simon
- ジャン・ヤンヌ

・ミッキー Mickey
- イヴォン・バック

・Louise
・ナレーション
ビュル・オジエ

・Sandrine
クリスティーヌ・パスカル

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一時期追いかけたジャック･オーディアール監督作品6作目。
賭博師とセールスマン、しがない2人の物語が交錯するネオノワールにしてデビー作。

同監督作『預言者』にも通じる大胆でダイナミックな映像に引き込まれた。
荒削りだけどしっかりホンモノを感じる。

ちょっとしたBL映画としても括れそうなくらい孤独な男達の微妙な関係性がちょっと切ない。

とりわけ、小者感漂うマルクス(トランティニャン)と天使感漂う青年ジョニー(マチュー･カソヴィッツ)の奇妙な関係が時にほっこり、時にヒリヒリ、絶妙な距離感だった。

端正な顔立ちにちょっと知恵が足りないジョニー。忠犬のようにマルクスを見る目が印象的だった。と言うか劇中でもワンコが効果的に使われてた。次いでに、他の出演作品が気になると思ったら『負け犬の美学』に出てた。(めちゃくちゃ犬繋がり。笑)

一方、ジャン･ヤンヌはプーさんにも似た優しい風貌の中にも不穏さすら感じ、意外とハードボイルドな役どころがしっくり来てた。

容赦ない展開と点が線になる構成も練られてる印象だし、ココから始まったのだと思うと妙に感慨深さも。


オーディアール監督らしい繊細さと大胆さが共存した見応え作品だった。