こなつ

ナイト・オン・ザ・プラネットのこなつのレビュー・感想・評価

3.8
「パターソン」のジム・ジャームッシュ監督によるオムニバス映画。ジャームッシュ監督はアメリカインディーズ界の巨匠と言われるが、何気ない日常を切り取って観せる作風は唯一無二のもので、まるで私達がそこに居るかのようなリアルさを感じる。かなりのフォロワーの方が鑑賞していることもあり、いつか観たいと思っていた作品。

ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの5つの異なる都市を舞台に、同時刻に走るタクシードライバーと乗客の人間模様を描いている。

国は違えど同じ時間を共有するタクシードライバーが、皆、夜の街を流しているという設定。それぞれの国民性に特徴があるが、タクシードライバーと客というほんの一瞬の出会いなのに、不思議な夜の世界が国を越えて繋がっている。

ロサンゼルス編 午後7時7分
大物エージェント・ヴィクトリア(ジーナ・ローランズ)を乗せる若い女ドライバー・コーキー(ウィノナ・ライダー)は、口は汚いがチャーミング、一見はすっぱな彼女に、ヴィクトリアは可能性を感じる。

ニューヨーク編 午後10時7分
やっと捕まえたタクシーは、運転手が東ドイツからの移民で英語は通じないし、まともに運転も出来ない。不安を感じた客が取った行動とは。

パリ編 午前4時7分
コートジボワール出身の運転手が乗せたのは、盲目の女性(ベアトリス・ダル)。気が強く態度の大きい女性にイラつくが、彼女の持つ鋭い感覚に驚く。

ローマ編 午前4時7分
神父を乗せたジーノ(ロベルト・ベニーニ)は、やたら神父に話かける。懺悔とか言っているが、話の内容は下品極まりない。心臓が悪く苦しそうにしている神父にも気づかず、、

ヘルシンキ編 午前5時7分
凍りつく街で無線を受けた運転手ミカ(マッティ・ペロンパー)が乗せたのは、3人の酔っ払いの労働者。アキと呼ばれた1人の男は眠り込んでいたが、そのアキがどれほど不幸な一日を過ごしたか2人の男達がミカに聞かせる。しかし、アキとは比べ物にならないほど不幸なミカは全く動じなかった。

カウリスマキ作品常連のマッティ・ペロンパーが出てきて、何とも嬉しく得した気分。このヘルシンキ編と、ウィノナ・ライダーのやさぐれ感が楽しめた。

それぞれの国の特徴を生かしたストーリー、タクシードライバーと客の会話劇が織り成すドラマはとてもお洒落だった。
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